Libelle が来た! (3) 胴体型取り1
胴体の接続作業はゆっくりですが進んでいます。
まだ、型を取るための下地作りです。
左側です。

ガラスクロスの積層部分にできた凹凸にパテを盛り、前後の繋ぎ目を滑らかにしています。
こちらは右側。

切れた箇所から右側にもクラックが広がっています。
こちら側の損傷範囲は左側に比べて前後に長くなっています。
何れの面も、パテ盛り部分を400番、800番、1000番のペーパーで磨き、表面をある程度滑らかにしたのちサフェイサーを吹いて微少な凹凸を塞ぎます。
こうすると後で型取りのガラスクロスと樹脂を積層した際に、硬化したガラス層が剥離し易くなります。

先ず、損傷面積の小さい左側にサフェイサーを吹いてみました。
これが乾いた後、1500番で磨き、型取り用の表面とします。
そこに離型剤を塗ってガラスクロスを積層し、乾燥後に剥ぎ取ります。
しかし、そう簡単に事は進みません。
前後の繋がり部分の表面形状を確認したところ大きな凸があることが分かりました。

左右の仮接続箇所に定規を当ててみました。
上が左側、下が右側です。
左右に亘って直線ではないですね。
特に、右側は接続部分の近くで「くの字」状に大きく曲がっています。
本来のリベレの胴体は、翼の後ろから尾翼にかけて略一直線上に窄まって行きます。
断面は水滴形ですが、表面の各部分においては前後方向に沿ってほぼ直線状です。
写真の様に表面が折れていると、塗装の済んだ胴体を前後から見たときリング状の折れ線が出てしまいます。
注意しないとわからないかもしれませんが、修復する以上は綺麗に仕上げたいと思います。
左側の折れ方は僅かですが、やはり気になってしまいます。
これらの折れて凸になった部分を削れば直線に近付きますが、肉厚が2mmしかないので、完全に折れが無くなるまで削るとおそらく孔が開いてしまいます。
さて、どうやって綺麗な表面を形成するか。
暫く考えてみます。
そうこうしている間に、6月に頼んでおいた部品がドイツのメーカーから届きました。
ウクライナ戦争のおかげで輸送コストが高騰し、しかも円が最安値という最悪のタイミングです。
私、昔からこういうの得意です。

梱包は二個口でした。
長い二本の棒は、エレベーターとラダーのコントロールロッドです。
4mあります。
箱から覗いているのはキャノピーです。

スチロールブロックに埋められています。
厳重そうな割に箱は単なる段ボール箱です。
ドイツからよく無事に届いたものです。

キャノピーです。
左が前です。
フレームに嵌めるためには周囲を大幅にカットして形を整えます。
表裏両面には保護フィルムが貼ってあります。
オリジナルは無色でしたが今回はグリーン色を選んでみました。
ちゃんと小窓の孔加工がしてあり、レールやスライド窓も付いて来ました。
こちらはウイングレットのレトロフィットキットです。

ウイングレットを取り付けるには、両翼端を切り、写真の下に見える黒いメス型を翼に埋め込みます。
ウイングレットはその孔に差し込んで固定します。
メス型に付いているブルーの部品は、切り取った翼端に埋め込むもので、ウイングレット無しの翼端を選択できるようになっています。
このキットには、FRP材料の他に図面、加工要領書が入っています。
作業用の手袋や紙コップまで付いていました。
まだ、胴体の接続段階ですから、キャノピーやウイングレットの作業は何時の事になりますやら。
あと、写真手前のY形の小さい部品はラダーのジンバルドライブです。
ジンバルドライブとはラダーの駆動部品です。
これは所謂リコール対策部品で、強度アップがされています。

左がASK21のラダー部分、右が本機です。
ASK21では、ラダーの左右面からアームが突き出ていて、その先端にケーブルが接続してあります。
左右のケーブルは操縦席の左右のペダルまで延びていてパイロットが足で操作します。
このような構造が一般的です。
しかし、リベレは凝っています。
見てのとおり不細工なラダーホーンはありません。
のっぺりとスッキリしています。
できるだけ突起を無くし抵抗を減らしています。
ジンバルドライブはここに使われています。

こんな構成です。
後ろ向きに出ている棒がラダーの孔に差し込まれ、この棒の左右の首振りによってラダーが左右に動きます。
中央の写真が中立位置です。
このときラダーはニュートラルです。
胴体から頭を出したラダーロッドに虫眼鏡形の部品が接続してあります。
この部品は胴体の水平軸にボルト止めしてあり前後にスイングします。
さらに、この部品のリング部分に45度の角度をつけてジンバルドライブがネジ止めしてあります。
ラダーを操作するとラダーロッドが前後に動き、虫眼鏡を前後に揺らします。
その結果、ジンバルドライブが傾きます。
ジンバルドライブ先端の棒はラダーの孔に差し込まれており、ラダーは上下のヒンジよって左右にしか動きませんから、棒の動きが左右に制限されます。
これによりラダーが左右に動きます。
少々、凝り過ぎですね。
ラダー表面がスッキリすると抵抗が減ります。
ですが恐らくは、抵抗削減のメリットよりも、この複雑な機構の重量増加や部品の品質管理の手間等のデメリットの方が大きい気がします。
しかしながら、私を含めて世界中のリベレファンはこのような拘りが大好きなのです。
いろいろ話が発散しましたが、改修部品も揃いつつあり、作業を速めないといけません。
樹脂の硬化作業は気温の高い時期が良いのですが既に秋になってしまいました。
できれば年内に胴体を繋げてしまいたいですね。
山崎