Libelle が来た! (7) 胴体積層 2

こんにちは

型の固定方法を決めました。

ネオジム磁石を使って胴体と型を押し付けます。

型の裏側にナットを両面テープで留めておき、胴体オモテのスカーフの上から磁石で引き付けます。
吸着力を大きくするために、スカーフの縁のギリギリのところにナットがくるようにして磁石とナットの距離を詰めておきます。
10mm角ほどの磁石ですがかなり強力です。

型の固定方法が決まりましたので、固定作業の前に前後胴体のポジショニングを確認します。

後部胴体が少し右に曲がっていたので、後部受台の最後部を2mm左に移動しました。
上下方向は位置ズレなしでした。

この状態で型を固定します。

樹脂にコットンフロック(ガラス繊維を短く切って粉末状にしたもの)を適量混ぜ、ペースト状にして重ね代に塗ります。

磁石を置いていくと、型がスカーフの裏面に押し付けられます。
余分な樹脂が溢れてくるのでヘラで取り除きます。

これで翌日まで放置です。

樹脂が固まったので磁石を取り外します。
裏に貼り付けたナットは先を曲げた針金で胴体頂部の隙間から釣り上げます。
ナットの孔に引っ掛けるのでとても簡単です。

頂部には屋根状の型を継ぎ足しておきます。

マスキングテープは位置決めの為の取っ手です。
右からのガラスクロスをこの部分の左端まで折り返して重ねます。

この屋根型の固定硬化にも一日掛かりました。

型を固定するといよいよガラスクロスの積層ですが、念のために切り取った胴体の一部を焼いてみました。

ただ、ライターで火をつけるだけです。
樹脂は焼けますがガラスはこのように残ります。
手前の白い層がゲルコートで奥側が内層です。

これを確認しますと、外側から#92110が1層、内側の4層が#92125です。
最内層の#92125はクロスの目が斜め45度ですが、他の4層のクロス目は垂直・水平方向でした。

積層チャートどおりでしたので最内層の#92125(斜め)から貼り付けます。

クリアシートに書いておいた輪郭にあわせてクロスを切り樹脂を塗り込みます。

樹脂が沁み込むとクロスが透明になって下のマークや書き込みが現れます。

積層作業は一人では無理なので I さんにお手伝い頂きました。
I さんはANAの現役機長で整備士の資格もお持ちです。

樹脂含侵が終わると貼り付けです。

胴体の高さ中央で位置合わせし、上側、下側の順に貼り付けます。
写真では見えませんが、胴体が一番右側に飛び出た位置の前後とフィルムに合わせマークが書いてあります。

全体を胴体に張り付かせたあとフィルムを外します。

この状態ではクロスの下に気泡が沢山残っています。
樹脂が軟らかいうちに気泡を押し出します。

ドライヤーで加熱し樹脂を軟らかくしながらローラーで押さえます。
樹脂が固まり始めるまで1時間ほど余裕がありますが、時間が経つほどに気泡の抜けが悪くなります。

5層貼り終えるのに2時間ほど掛かりました。

先ず、24時間自然硬化させます。

そして次の日、続けて加熱硬化です。

胴体にダンボールを張り付けてチャンバーを作り、セラミックヒーターで温風を送ります。

段ボールの右側に出ている線はヒーターをON・OFFするサーモスタットの温度計です。

サーモスタットのセッティングを色々試し、最適値に合わせます。

加熱開始温度を54.5℃、加熱停止温度を62.5℃としました。

チャンバーに確認用の温度計を取り付けました。

確認用の温度計は58℃~66℃の間で安定しました。

加熱時間は15時間です。
この樹脂を航空機に使用する場合には加熱処理が必須です。
加熱処理によって使用温度範囲が広がります。

50℃~55℃で加熱処理したグライダー等は-60℃~54℃の使用環境で高強度を発揮します。
また、エンジン機の場合には機体の一部が高温になりますが、80℃で加熱処理すると使用環境温度が72℃まで広がります。
今回の加熱温度は55℃より少し高めですが強度が上がるのでOKでしょう。

熱処理が完了しました。

新しい樹脂のグリーンが綺麗です。
縦方向の数本の筋は、型を作るときに裏側に付いた梱包テープの段差です。
この後、裏面にリブを作りますので、型の裏面を先にサンディングしておいたのですが、テープの段差がまだ取り切れていません。

胴体の上部と下部の輪郭が直線になっていませんね。
新機製造時にはメス型に表層のゲルコートを塗り、そこに外側から内側のクロスを重ねていきますので表面は完璧に奇麗な形状になります。
ただし、最内層のクロス層は結構な凹凸になっています。

今回の修理では、凹凸のある最内層に型を貼り、そこにクロスを積層していきますので、修理部の表面とその横の健全な面とは殆ど一致しません。
ですので、強度的にはこれで良いのですが、見栄えを良くするには塗装の前に表面出し作業が必要です。

引き続き左側の修理を進めます。

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