TUDOR 7 最終回

admin   5月 4, 2019   TUDOR 7 最終回 はコメントを受け付けていません。

TUDORもいよいよ仕上げとなりました。

組み上げた機械の裏側です。
機械の裏側とは文字盤の裏側です。

反対の表側です。

何度も言ってしまいますが50年も経った機械とは思えないほど綺麗です。

文字盤と針を付けてみました。

文字盤の細かな汚れの浮きは仕方ないのですが、改めて眺めてみると針の蛍光塗料の汚れが残念です。
針は時計の中で最も見るところでもありますし。
ということで、針を再度ばらし、蛍光を塗り直すことにしました。
良い蛍光塗料があるかをネットで調べてみますと、ありました。

㈱カンペハピオのヌーロ。
分量も8mlの少量分がありました。
8mlといっても時計の針の蛍光補修に使うのはそのうちの僅かです。
多くの塗料が使われずに固まってしまうのがちょい悲しいですが。

まずは古い蛍光を落とします。

針の先で突くとポロポロと崩れるようにとれます。
蛍光は針の窓に充填されていて、塗るときには針の裏側から押し込むように塗り込みます。
多過ぎたかなと感じるぐらいがちょうどです。

拡大すると他の部分のメッキに汚れがありますが、これは通常使用では全くわかりません。
とにかくこれでスッキリしました。

ようやく全ての作業が終わりましたので機械を組み直しケースに入れてみました。

良い感じです。
よーく見ると使用感が見えるのですが、パッと見だけでは新品みたいになりました。

時計が若々しく見える条件は、やはり文字盤の状態が良いことです。
これは普段の使い方次第で随分変わります。
それと、ケースがメッキでないことで若返りが簡単です。
ステンレスや金無垢材ですと少し研摩するだけで新品のようになります。
表面が削られる量は僅かですのでケースの形が変わるようなことはまずありません。

この時計の精度ですが、リューズを15回ほど巻いたあと文字盤を上にした平置き状態で様子を見ました。
18時間後までは+2~-3秒の誤差、その後24時間後までに-40秒となり停止しました。
申し分ない高精度です。

このTUDORは、Kさんがおばあさんから譲ってもらったのだそうです。
今回リフレッシュしまして大変喜んで頂きました。
引き続き大切に扱って頂けるとのことで良かったです。

山崎

TUDOR 6

admin   5月 2, 2019   TUDOR 6 はコメントを受け付けていません。

今回の作業も終盤になりました。

今日は風防の修復です。
この風防はプラスチック製なので研摩は比較的簡単なのですが、透明性を出すには意外と手間がかかります。

磨き前の風防です。

時計に付いていた状態ではそれほど気になりませんでしたが、結構、傷が付いているものです。

まずペーパーの800番で傷を取り、そのペーパー目を無くしていく途中の1000番での研磨中です。

2000番までペーパーを進めた後、布とコンパウンドで磨きます。

横の青いのは歯磨きの柄を加工した磨き棒です。

今回、表だけと思っていましたが、何分古い風防なので、裏面に細かなヒビが出ていました。
干上がった池の底の割れた表面のような感じです。
これが、却って表の傷よりも深く、消すのになかなか苦労しました。
新品風防が入手できるのであれば迷わず交換ですが、このケースに合った風防を見つけることができず、やむなく磨き作業となりました。
両面とも鏡面にするのは結構骨が折れる作業で、略一日掛かりました。

とういうことで磨き後です。

写真では綺麗に見えますが、拡大鏡で見ると取り切れていない細かな傷が多数残っています。
でも意識しないと見えないので実用上は目立ちません。

仕上がった風防をケースに組み込みます。

レンズをケースの表の土手に被せ、その上からベゼルを被せます。
これらは全てROLEX純正品です。
レンズの裾がケースとベゼルとで挟まれる構造です。

なかなか良い艶が出ていると思います。
時計整備は、このような after の姿を見るのが楽しみでやっているようなものです。

さて、次回はこのシリーズの最終回です。
組み直した機械をケースに入れますよ。
どれくらい綺麗になりますか。

山崎

TUDOR 5

admin   4月 23, 2019   TUDOR 5 はコメントを受け付けていません。

ベゼルを磨きました。
文字盤の周りにあって時計の表情を作る重要パーツです。
ここも長年の使用で細かなスクラッチ傷が沢山入っています。

これもペーパーとアモール、コンパウンドの順に磨きます。
ちょうど円錐形状ですので電動ドリルを使います。

ドリルに治具を持たせ、治具の表面に両面テープでベゼルを貼ります。
治具は、プラ板を丸く切って中心にボルトを通し、コマの形にしたものです。
ドリルを少し回転させ、ベゼルの中心が回転軸と一致するまでベゼルの貼り位置を調節します。

中心が出たら、歯ブラシの柄で作った磨き棒の先に、細かく切った各番手のペーパーを両面テープで貼り、回転するベゼルに当てて研摩します。

ドリルを使うのは2000番のペーパーまでで、そのあとのアモールとコンパウンドは、ベゼルを置いた状態で磨きます。
と言いますのは、アモールもコンパウンドも水分があるので、両面テープが直ぐに剥がれてしまうのです。
また、これらは磨き作業の最終工程ですから、顕微鏡下で傷の減り具合を見ながら磨く方が効率的です。

ベゼルもステンレスですが、ケースに比べると少し軟らかい素材のようです。
ヒノキ棒で磨くと、ヒノキの繊維が勝ち過ぎて小キズが消えません。
そこで、眼鏡拭きの布を小さく切って、これにコンパウンドを浸み込ませて磨いてみました。
どうやら正解でした。
徐々にキズが取れていきます。
時計作業をすると毎回何か発見があって面白いです。

ペーパーから始めて延べ3時間ぐらい作業をしますと鏡面に仕上がってきました。

もともと大きな打ち傷が無かったので研摩時間が少なくて済みました。
素材がステンレスですからしっかり磨くことができます。
メッキですとこのようにはいきません。

今回の時計も段々と仕上がりに近づいてきました。
次は風防の研摩です。

山崎

TUDOR 4

admin   4月 22, 2019   TUDOR 4 はコメントを受け付けていません。

部品の清掃が終わり、機械を組み立て、運転してみました。
ご覧のように快調に動きました。

TUDOR

50年前の機械とは思えないほど、駆動部のすり減りなどもなくしっかりしています。
ゼンマイを巻き上げ始めると直ぐに動き出しましたので、全体の摩擦は小さくなったようです。

ただし、まだ、針をつけていないので精度は不明です。
最終的には、針をつけて、1日の誤差が少なくなるように調整します。
とは言っても、機械式時計の場合は一日に10秒~15秒の誤差は出るものです。

さて、ケースの磨き作業も行いました。
清掃前です。

長年の汚れですが、これでも随分と綺麗な方です。

アルコールと歯間ブラシで汚れを落としました。

これだけでもかなり綺麗になった感じがします。

サイドの細かなすり傷と微小な凹凸傷です。

肉眼では目立ちませんが、写真に撮ると結構年季が入っていることがわかります。
しかし、普通は一つや二つはある大きな打ち傷が一切見当たりません。
とても丁寧に使われていたようです。

両サイドの鏡面仕上げ部分につき、800番のペーパーで傷を取りました。

このあと、ペーパーの番手を 1000,1200,1500と細かくしていき、最後は金属磨き用のアモール、8000番のコンパウンドで鏡面仕上げします。
どれもホームセンターなどで入手できます。

ペーパーは指で押さえて磨きます。

次に、アモールを付けて模型用のヒノキ棒で擦って傷を減らします。
アモールは固いバターのようですが手で触ると少しザラザラ感があります。
つまり、粗いコンパウンドなので一定以上の小傷が必ず残ります。
磨き面を蛍光灯にすかすと薄く白く濁る感じです。

最後に残った細かな傷は8000番のコンパウンドをヒノキ棒の側面に付けて擦るように磨きます。
ヒノキ棒の端面で磨くと、木の繊維が磨き面に立って、細かな磨き傷が残り続けます。
なので、最後は木の繊維の長手方向を使って撫でるように擦ります。
軽い力で5~10分磨くとクリアーな鏡面になります。

旧い時計は、長年の使用感が蓄積されるものです。
それらを残すというやり方もありますが、今回はお婆さんから譲ってもらった後、新たにKさんとの付き合いが始まります。

ということで、もう少し各部を綺麗にして新品当時の姿に近づけたいと思います。

山崎

TUDOR 3

admin   4月 19, 2019   TUDOR 3 はコメントを受け付けていません。

今回は、ゼンマイや軸受ルビーの清掃・注油です。

まずは、ゼンマイを取り出す前の香箱の様子です。

思ったほど汚れていませんでした。
ただし、オイルは完全に無くなっていてカラカラですね。

ゼンマイを取出しました。

取出し時にゼンマイが一気に解けると、中央の芯部材がどこかに飛んだり、ゼンマイの一部が折れ曲がったりする恐れがあります。
そうならないように爪で押さえながら中央部分から慎重に伸ばしていきます。
なかなかコツが要ります。

香箱をアルコールで洗います。

一方、ゼンマイの方は、布にアルコールを付けて汚れをふき取ります。
布を介してゼンマイを指で挟み、ゼンマイを引きながら両面の汚れを取ります。
最初は、ザラついた感触がありますが、数回引くと滑らかな感触になります。
ゼンマイの表面に傷は有りませんでした。

ゼンマイの清掃が終わると、直ぐに香箱に戻します。
指で巻き込むのですが、曲がり癖のあるゼンマイを反対側に曲げながら入れなければならず、これが一苦労です。
折れ目を付けないようにゼンマイを押さえ、香箱をチョビチョビと回しながら巻き込んでいきます。

巻き込みが終われば、オイルを指します。
ゼンマイに塗るオイルと、オイルを垂らした様子です。

側面に点々とオイルを置くと隙間にしみ込んでいきます。

時計のゼンマイを巻くと中央のコマが写真で反時計方向に回り、外周に張り付いているゼンマイが、中心側に巻き取られます。
このとき、重なったゼンマイどうしが擦れます。

中央のコマは、香箱の外で噛み合う歯車によって逆回転しないようになっていて、巻き上げられたゼンマイの戻り力によって今度は香箱全体が反時計方向に回ります。
香箱の外周には、写真のようにギヤが付いていますので、これで隣の歯車を回します。

ゼンマイが解放される時にも、隣どうしのゼンマイが擦れます。
このゼンマイは12重に重なっているので、間にオイルがないと摩擦が大きくなって滑らなくなります。

毎度のことですが、ゼンマイの清掃・注油が終わるとホッとします。

続けて他のパーツもアルコール・ブラシで洗います。

テンプの軸を受けるルビーに注油します。

まず、このように花柄の止め金具を開きます。

軸受をピンセットで取り出し、蓋をしているルビーを離します。

このルビーは重なっているだけなのですぐに外れます。
もう一方の軸受ケースに入っている孔付きのルビーはケースに嵌め込んであります。
中央の黒い棒は髪の毛です。
右のルビーの表面には、既に直径の3分の2ほどの範囲にオイルを垂らしています。
左の孔付きルビーと軸受のセットをピンセットでつまみ、右のルビーに被せます。

2枚のルビーがオイルの表面張力でくっつきます。
直径の約半分ほどの所にある白い細い線がオイルの外縁です。

オイルの量に過不足が出たり、オイルが中央に寄らずに端に流れてしまうと、再度アルコール洗浄からやり直しです。
今回は2回目で上手く適量のオイルが入りました。
これをプレートの孔に戻します。

道具です。

ネジサイズ毎のドライバーと、数種類の針、ピンセットなどです。
また、段々近くが見えなくなってきているので、私の時計作業には実体顕微鏡が必須です。

次回は組立です。

山崎

TUDOR 2

admin   4月 17, 2019   TUDOR 2 はコメントを受け付けていません。

機械の分解を行いました。

まず機械をケースから取り出します。

少しピンボケですいません。

文字盤のアップです。

表面に少しプツプツが出ていますが、実用上はほとんど目立ちません。
針の蛍光が所々カビています。

文字盤の裏側です。

文字盤の裏側は、殆どの時計でそうですが、このように未処理?風な感じに留めてあります。

少し見にくいですが、機械には Cal. 2546 の刻印があります。
TUDOR GENEVE とも刻印してありますが、この機械はおそらくETA社製だと思います。

テンプを外します。

昔の時計らしく、テンプの周囲にはバランス取りの小さなねじが沢山取り付けてあります。

複数の歯車を抑えているプレートを外します。

どの歯車も綺麗な状態です。

歯車を外し、さらにゼンマイが入った香箱を抑えているプレートを外して円筒状の香箱を取り出しました。

分解前にゼンマイの巻き上げ分を戻しましたが、意外にかなり巻き上げられていました。
おそらく、オイル切れのために隣り合うゼンマイどうしが強く擦れているのでしょう。

全部の部品です。

ここまでのところ、特に不具合は無そうで良かったです。
50年も前の時計なのにすごく頑丈な印象を受けました。

次は、問題の香箱です。
中がどのようになっているか楽しみです。

山崎

TUDOR 1

admin   4月 16, 2019   TUDOR 1 はコメントを受け付けていません。

ご無沙汰しております。
年明けから3月期末まで慌ただしくしていて随分間が開いてしまいました。
久々のアップですが、すいません、また時計ネタです。

今回のは、前回のRADOの弁理士Bさんのご友人のKさんの時計です。
お婆さんの時計を譲り受けたそうですが、秒針がコトコトと動いて直ぐに止まるとのことです。
一度、内部の確認をということでお預かりしました。

こんな外観です。

TUDOR(チュードルとかチューダーとか言います)のレディースです。
ネット情報ですと、昔のTUDORは、当時ROLEX社がイギリスでのROLEXの知名度を高めるために、開発したばかりのケースをそのまま使いながらスイスETA社の機械を入れて作った価格を抑えた時計だとあります。

TUDORを触るのは初めてです。
どのような時計か楽しみです。

風防などは流石に使用感がありますね。
ただし、大きな打ち傷がありませんので大切に使われていたことがわかります。

文字盤にはバラのマークがあります。
これは「小バラ」といって、当時のTUDORにしか印刷されていないようです。
今ではプレミアがつきます。
その後のTUDORは、バラのマークではなく盾のマークに替わっています。

文字盤全体に大きなサビなどは見えません。
インデックスの外側の蛍光マークも全て当初の形のままです。
ただし蛍光機能はありませんが。

針の蛍光塗料がカビています。
これも塗り直しが必要でしょう。

文字盤にあるOYSTERは、ROLEXが発案した防水性ケースのことです。
金属から削り出したケースにねじ込み式リューズを組み合わせて防水性を高めています。

SHOCK RESISTING とあるのは、テンプ(左右に往復回転する時計の心臓部)のルビー押さえに弾力を持たせて時計に衝撃が掛ってもテンプの芯が折れないようにした構造のことです。
(オールドRADOの修理4の図参照)

風防はプラスチック製で、長年の使用で沢山の擦り傷があります。
ただし、大きな傷はないので、少し研摩すると綺麗になると思います。
プラ風防は研摩できるので扱い易いです。

風防周りのベゼル、ケースのサイドは本来は鏡面仕上げですが、細かな擦り傷が沢山あります。
これも研摩して綺麗にできます。
研摩と言ってもほんの数ミクロン削るだけなので、金属が痩せるようなことはありません。

型番とシリアルナンバーです。

Ref.7535/0
Ser No. 621×××
シリアルナンバーからみて1968年製のようです。
なんと50年前の時計。

裏蓋を開けてみました。

全体的に汚れていますが、これまでの使用時間を考えるとかなりきれいな状態で、大きなダメージは無さそうです。
ねじなどの欠損、痛みもなさそうです。
この程度の汚れだと、アルコールでクリーニングすると綺麗になります。

当時の機械は、歯車の芯孔が、単に金属の地板に孔をあけただけのものも多いのですが、これは、しっかりとルビーが入っています。
敢えて17 RUBIESと刻印してあるので、当時としてはルビーを贅沢に使ったのでしょうか。
17個のルビーは今では一般的となりましたが、その後の時計では、文字盤に17 JEWELSと書くことが多くなりました。

今回のご依頼の一つが、ベルトが長いので一コマ抜いて欲しいというものです。

これは所謂「すし巻きベルト」というやつで、中央の板を折り曲げてコマどうしを繋ぎます。
なので、コマ調整の際に真中の部品を広げてしまうと、たいていの場合、不用意に折り目が入り、次に装着した時には折り目が目立ってしまうのです。
Kさんは、ROLEXの代理店にコマ調整を依頼したけれど断られたとのことです。

ベルトの2コマ目の中央部品が少し折れ曲がっています。
そのため裏側の曲げ部が少し開いています。
このコマの形状を美しく修正するのはかなり難しいので、この中央部品を抜きつつコマ調整することにしましょう。

最初の写真に戻りますが、12時側のベルトの付け根の金具(フラッシュフィット)が浮いています。
場合によっては服の袖が引っ掛かると思いますのでケースに沿うように修正します。

50年前の時計ですから精度誤差が気になります。
秒針が少し動いて止まるということは大方ゼンマイの潤滑不足です。
当然に他の部分のオイルも切れているので、歯車の軸受けがすり減って歯車の姿勢が変化し、歯車どうしが干渉して止まるということもあります。

何が出て来ますか。
次回は、分解に進みます。

山崎

オールド RADO の修理 7(最終回)

admin   12月 15, 2018   オールド RADO の修理 7(最終回) はコメントを受け付けていません。

このシリーズ最終回です。

まず風防の手入れからです。
表面には沢山のひび割れがあるのですが大きな打ち傷はありません。
そこで、どれだけ綺麗になるか磨いてみることにしました。

この風防はプラスチック製でケースの縁溝に嵌め込んであります。
専用工具で周囲を掴み、ギュッとすぼめて縁溝から取り出します。

まずはひび割れの除去です。
ペーパーを使い、240番→400番→800番→1200番→1500番の順に磨きます。

手だけで磨くのは大変なので、ハンドドリルに自作の円盤冶具を取り付け、そこに両面テープで風防を貼り付けます。
ドリルを低速で回しながら、木片に巻き付けたペーパーを当てます。

この風防には日付用のレンズが付いていますが、内側に膨らんでいて表面側はフラットです。
とても磨きやすいです。
240番のペーパーでひび割れが無くなるまで磨き、後はペーパーの番手を上げて磨き傷を消していきます。

写真はありませんが、仕上げは 8000番の研磨剤をヒノキ棒に付けて撫でるように磨きます。
表面が完成したところでケースに嵌めてみました。

何か、いまいちです。
改めて見ると、裏面にも小さなひびが沢山入っていて、斜めから見ると光ります。
それに、10時位置にある大きなひびが目立つようになってしまいました。

やっぱり新品に交換しよう!

例によってヤフオクで風防を探しますと、ちょうどRADO用の直径30.5mmが出ていました。
こちらは特に競うことなく開始価格で落札することができました。

流石に新品は変色がなくクリア感が半端ないです。
見栄えが大幅に変わります。
早速ケースに付けてみました。

風防はOKです。
あとはケースの小傷ですね。

ケースは20μmの金箔ですから磨き過ぎると地肌が出てしまいます。
金属磨き用のアモールをヒノキ棒に付けてまず大よその傷を減らし、仕上げに8000番の研磨剤で磨きました。
金は柔らかいので直ぐに磨けてしまいます。

いろいろありましたが、ようやく完成しました。

ビフォー アフターです。

文字盤が少し心残りですが、まずまずの復活ではないでしょうか。
写真では上手く表現できないのですが、金独特の軟らかい色になりました。
ばねを折ったときは慌てましたが、なんとか収まって良かったです。

時計をBさんに郵送したところ、早速、お父さんの仏壇に供えて頂いたとのことです。
その週末にはベルトを買いに行かれるとかで、また元気に動いてくれると思います。

山崎

オールド RADO の修理 6

admin   12月 14, 2018   オールド RADO の修理 6 はコメントを受け付けていません。

こんにちは

RADOの修理も終盤になってきました。
リューズの位置固定ばねが入手できたので機械の組み立てが終了しました。

全ての部品の汚れをアルコールとブラシと超音波洗浄機できれいにしました。
機械をケースに止めるねじが一つ欠けていましたが、手持ちのジャンク時計から流用しました。

これは自動巻き機構の歯車です。

三つの歯車が見えますが、左上の歯車がローターの回転を受ける駆動歯車です。
右と下の歯車がワンウェイクラッチで、駆動歯車の歯が双方に掛かっていて、ローターの回転がどっちに回ってもこれら二つのうちの片方がゼンマイに回転を伝えるようになっています。

ワンウェイクラッチは夫々ルビー付の円盤が上下2枚あります。
上下の歯車にはルビーが6個ずつ使われているので、ワンウェイクラッチ2個分で24個のルビーが使われています。
あと、ローターの駆動歯車に10個のルビーが使われているほか、この歯車の軸受けにも使われていますので、自動巻きユニットだけで35個以上のルビーが使われています。
この時計は57JEWELSですから、通常の機構部に20個ほどのルビーが使われています。
一般の時計は17個程度ですから、なかなかの豪華仕様です。

ワンウェイクラッチの歯車にルビーが入っていない孔があるのはルビーが脱落したのではなく、オイルを指すメンテナンス用の孔です。
この中にものすごく小さな爪と歯車が入っています。

次はリューズです。
長年の使用でリューズがすり減り、上手く指が掛かりません。
なので、オリジナル性よりも実用性を優先して市販のものに交換します。
オリジナルを分解するとこんな感じです。

リューズは巻き芯のねじにねじ込んであるだけなので、ペンチで巻き芯を掴んで、リューズを手で回して外します。

ネットで良さそうなリューズを探そうとしました。
ケースが金色なので、リューズも金色を選びます。
しかし、ここで少々悩み発生です。
巻き芯のねじ径とリューズのねじ径が合わないのです。
オリジナルの巻き芯のねじは1.0mm径なのですが、市販のリューズには1.0mmがなく、殆どが0.9mm径のねじです。

RADOの純正リューズが見つかれば問題ないのですが、品がなく、またあっても値段が張りそうです。
そうすると、やはり0.9mmねじのリューズを使いたくなります。

そこでネットで探したのが、延長巻き芯です。
これが優れもので、雄ねじと雌ねじが切ってあって、雄雌同径のものもあれば、異径のものもあるのです。
今回使ったのは、雌ねじが1.0mmで雄ねじが0.9mmのものです。

このままでは長いので、写真のようにオリジナルの巻き芯と延長巻き芯の両方とも黄色の位置でカットします。
これは、普通のニッパで簡単に切れます。
ただ、注意しないといけないのが、リューズは巻き芯のねじにねじ込んで固定するのですが、ギュッと締め終わったところがリューズの固定位置になります。
つまり、一杯締めた状態で巻き芯の胴体部分の長さがバッチリ決まらないと、リューズを機械に付けたときにマズイことが起こります。

巻き芯が長いと、リューズを一杯に押し込んでもケースとの間に隙間が残って不細工になります。
一方、巻き芯が短くなるとリューズを押し込もうにもケースに当たって押し込めなくなります。
ですので、巻き芯を切るときは少し長めに切り、リューズを締め込んで長さを確かめながら少しずつ短くしていきます。

1時間程長さ調整をやりましてこのようになりました。

これを取り付けたのが最初の写真です。
これでゼンマイの巻き上げが楽になりますし、見栄えも格段に良くなりました。

機械の方はこれでほぼ完成です。
あとは風防とケースの手入れです。

次回はいよいよ最終回です。

オールド RADO の修理 5

admin   12月 12, 2018   オールド RADO の修理 5 はコメントを受け付けていません。

今回は、やっちまったの巻きです。

部品の清掃が終わって、組み立てを始めました。
リューズの押引機構の部分になり、小さなバネを飛ばさないようにしながら部品を配置しました。
その時に、ついうっかりと下の写真の下段のようにばねを組んだのです。

ここで正解は、上段の写真の状態です。
リューズを押し引きすると、くの字の部品が支点を中心に回転し、先端の小さな突起が動いて、上段写真の位置と赤丸印の位置とを行き来します。
上段写真の位置がゼンマイを巻き上げることができる通常位置で、リューズを引いた赤丸の位置が時間合せの位置です。

このどちらかに組めば良かったのですが・・・・。
このあとリューズを差し込んで動作チェックをしますと、当然、リューズは機能しません。

ここで、一旦、バラすべきだったのですが、突起の位置が違うことに気が付いてしまいました。
それならということで、横着をしまして、下段写真の矢印のように突起を押しながら、ばねの腕を下に広げることにしました。

これが意外と重く、もう少しで突起が腕の先端を乗り越えそうだったので、もう一息ばねの腕を押したとき、「パキッ」という音がして、ばねの先端が顕微鏡の視界から消えました。

?????・・・・・。
やっちまったあ !

写真で見ると、通常の二箇所の位置間を乗り越えるときの山の高さと、ばねの先端の山の高さはそれ程変わりません。
しかし、このほんの僅かな高さが命取りとなりました。
ばねの止めネジを3回転緩めるだけで簡単に修正できたのに。

折れたばねです。

これはどうしようもありません。
ハンダや接着剤で着けるのは無理です。
古い時計なので新品部品は入手不可能でしょう。

ということで、頼みのヤフオクで部品を探してみました。

ブランド時計のジャンルに行き、「RADO ワールドトラベル」で検索してみると、稼働品が幾つか出てきました。
しかし、どれも1万円以上します。
どうもここのところ古いRADOは人気が出ているようです。
それに、稼働品から部品を取るとその時計が動かなくなるので大変気が引けます。

この時計のムーブメントは、今はもうETA社に吸収されましたが、スイス・アドルフシールド社製 Cal.1701ですので、同じ機械を載せている時計を探します。
例えば、RADOのゴールデンホースや、グリーンホースです。
どれも同じ雰囲気の時計ですがゴールデンホースが最も有名でしょうか。

ヤフオクを探しますと、グリーンホースのジャンク品が1,000円で出ていました。
残り時間はあと四日です。
できればそのままで落札したいところですが、幾らになろうが絶対に買わなければなりません。
ドキドキの四日間が過ぎ、なんとか4,000円で落札することができました。
これです。

流石にコンディション悪そうですね。
中を開けてみると、写真ではわかりませんが、あちこち錆びていて、これを復活させるのは厳しそうです。
ムーブメントを止めるネジは二つともありません。

この機械は、金メッキがされておらず通常タイプのものです。
リューズを巻こうとしましたが何かが引っ掛かっていて動きません。

リューズの形はしっかりしているのでこちらの時計に使えるかなと思いましたが、長さが足りません。
同じ機械なのですが、グリーンホースのケースがやや小さいので、リューズから先の巻き芯の長さが短いのです。
それに巻き芯をねじ込むリューズの雌ねじ回りの形も違いました。
残念。
これに時間を掛けるわけにもいかないので、目的のばねを取り出すだけにしました。

ばねは大丈夫でした。
これで、こちらの復旧が進みます。

尚、後日、このグリーンホースは一応ケースだけ磨き直し、折れたばねのことも含めて故障個所を全て明記してヤフオクに再出品しました。
そしたら、買った値段よりも少しだけ高く売れてしまいました。
ほんの時々ですが、こういうラッキーがあるのも時計修理の楽しみの一つです。

次回に続く