ベンツ W124 メーターパネルの分解
こんにちは
今回は、メーターパネルの分解です。
W124では定番ですが、古いメーターパネルにはカビが出ます。
ウチのはこんな感じです。
そこで化粧直しの方法をネットで調べてみたのですが、これが意外と出て来ません。
海外のサイトにも情報がありません。
というか企業秘密の世界になっているようです。
おぼろげながらに分かった情報では、クリアパネルはケース本体にガッチリ接着してあって、下手に剥がそうとするとパネルが割れるとのこと。
しかし、今のままでは余りにも見すぼらしい。
それではということで、お試し分解用に中古品を入手しました。
パネルは割れていませんが細かい傷が沢山あります。
上手く取外すことができれば磨くのは簡単です。
ケースの塗装はまだまだ大丈夫そうですが、再塗装するともっと綺麗になるでしょう。
さて、上手く外せるでしょうか。
事前に以下の情報を仕入れていました。
・パネルの下辺は単に嵌め込んであるだけ
・接着剤は温めても軟らかくならない
・取外し後の写真によればケースに穴をあけたりはしていない
・接着部は溶かしたりせず割って剥がしている
クリアパネルそのものの構造が不明ですが、どうやら接着部は割るしかなさそうです。
今回、現物を手にしながら以下の手順で作業しました。
まずは、使用した道具です。
普通のカッタ―ナイフと時計の裏蓋用のこじ開けです。
こじ開けの先端は、表面はテーパー面ですが裏面は平面です。
実はこの形状が役立ちました。
まず、下辺の接着状態を確認しました。
ケースを両手で捻るとパネルが少し動きます。
やはり下辺は接着されていないようです。
次に両側辺です。
ここは接着されていますね。
接着部は、側面の端面とケースの隙間ではなく、パネル縁部の裏面つまり向こう側の面のようです。
取り敢えずカッターナイフを差し込んでみました。
最初は隙間がきついのですが、刃を入れますと一定の抵抗があって奥まで入ります。
その時に、僅かにミシミシと音がします。
全長に亘って刃を通しましたら隙間が緩くなり、ケースを捻るとクリアパネルが遊ぶようになりました。
どうやら側面の接着はこれで外れたみたいです。
接着状態ではクリアパネルとケースの隙間がないのですが、カッターを入れることでクリアパネルがケースの壁から離され、接着部が剪断するようです。
次に上辺にもカッターを入れてみます。
ここも抵抗がありますがカッターは奥まで入ります。
しかし、これだけではパネルが動くようにはなりません。
次にこじ開けを入れてみました。
こじ開けの厚みは1.5mmほどあるので、こじ開けがパネルの側面局部を強く押さないようにケースを指で拡げながらこじ開けを差し込みます。
一応奥まで入るのですが、これだけでは接着部が割れません。
分解して分かったのですが、上辺はかなりガッチリ接着されています。
写真が前後しますが、パネルの上辺には1cmほどの張り出した庇があって、この先端がケースに接着されています。
クリアパネルの固定は、下辺を奥の隅に押し当て、斜め姿勢のまま上辺をケースの手前天井に貼り付ける構造ですから、上辺の固定はしっかりしていなくてはなりません。
そこで、上辺の両サイドから攻めることにしました。
既に外れている側部をやや持ち上げるようにして、剥がす方向の力を接着領域の端部に加えておきます。
当然ですが、割れない程度に軽く持ち上げます。
このようにしておきながら上辺の隙間にこじ開けを差し込み接着部に力を加えます。
こじ開けの平面側をパネルに向け、パネルに当て付けたまま奥に押し込みます。
つまり、ケースの底を押します。
これは、パネルとケースの隙間にあふれ出た接着剤をパネルの表面から確実に剥がし、更にケースの底部を局所的に押し込むことで、ケースの底面をパネルのエッジから奥に離して接着部を剥離するためです。
この押込みにより、僅かですがミシミシと音がします。
ケースの底が弾性的に押し込まれ接着部が少しずつ割れていきます。
その意味では、刃先はあまり鋭利でない方が良いです。
鋭利過ぎるとケースを変形させる前に切り込んでしまい、接着部に剥がし力が伝わりません。
また、こじ開けの刃先が丸くなっているのは、局部を適度に押し込めるので good でした。
底を押す、というのがポイントです。
くれぐれも焦ってパネルの側面を面に直角方向に押してはいけません。
庇の端部はまだ広い面積でケースに接着されていますので、このまま側面を押しても接着部は割れません。
むしろ、パネルの局部に応力が集中してヒビが入ります。
こじ開けを底部に押し付けても音が鳴らないようになったら、こじ開けの裏面をパネルの側面に押し当て、ケースに対してせん断方向に力を加えます。
グイグイと押してはいけません。
また、このときにこじ開けを捻ろうとすると、こじ開けの側部エッジがパネルの一カ所を強く押しますのでヒビが入る恐れがあります。
先に示した写真の上辺やや中央に白く光るヒビが見えますが、このようになります。
ただし、パネルの庇の部分だけに入ったヒビでパネルの表面側には達していません。
パネルの端を持ち上げ過ぎたのも原因かもしれませんね。
作業中は、ルーペを使って、庇部分にヒビが入っていないかを常に確認します。
今回は小さなヒビが入ったので、反対の端部から攻めることにしました。
あとは、ミシミシという音を聞きながら根気よくこじ開けで力を加えます。
上辺が全部接着されている状態から、先ず端部が剥がれ始めるまでが第一段階です。
端が浮き始めると、剥離部の切欠きが接着部を進み易くなるので作業が早まります。
今回は、上辺の途中まで剥がした段階で、残りがバキッと一気に剥がれました。
一瞬、やっちまったかと思いましたが、例のヒビ以外に被害はなく無事に外れました。
じっくり二時間も作業すると外れると思います。
くれぐれも急がないことです。
以下、ケースの様子です。
上辺には浅い溝が掘ってあり、クリアパネルの庇が軽く差し込まれるようになっています。
この形状からみて、クリアパネルのエッジ部を面に直角方向に押しても、庇は溝の中で動き難いようです。
ただし、パネルの端をやや持ち上げ気味にして剥離の先端部に剥がす方向の力を加え、そこをこじ開けでちょいちょいと刺激する方法は効果があります。
パネルの側辺を受けるケース側にも僅かな溝があります。
ただし、接着剤の量が少ないので、カッターを入れるだけでパネルを横にずらして接着部を割ることができます。
上辺の接着剤はしっかり点状に盛られています。
ケースの下辺受け部には接着剤が殆ど盛られていません。
次はクリアパネルです。
パネルの形状を知っておくと迷わず作業することができます。
上辺の庇です。
側辺にも背の低い庇があります。
パネルの周囲には黒い縁取りがありますが、これは表面だけに施した塗装です。
クリアパネルは完全に一体構造です。
庇の横です。
パネルの一部が剥がれてケース側に残ってしまいました。
上辺と下辺の裏面です。
下辺には接着剤が殆どありませんね。
下辺の両側です。
両サイドに位置決め用の突起があります。
側辺と庇の裏面です。
庇の表面に幾つもヒビのような筋が見えますが、これは射出成形時の型の繋ぎ目と思われます。
一つだけヒビを作ってしまいましたが、この写真ではわかりません。
ビクビクしながら作業を始めましたが、無事に外すことができました。
これでクリアパネルの形状が分かりましたので、本番のメーターでは安心して作業を進められます。
尚、このお試し用のメーターケースですが、このあと塗装やクリアパネルの磨きをやってみようと思います。
作業の様子はまたお知らせしますね。
山崎