W124 パージバルブのOH

こんにちは
今回はパージバルブのOHです。

前回はチャコールキャニスタの話でしたが、パージバルブは、キャニスタに蓄えられたガソリン成分をエンジンに供給する際のON-OFFバルブです。

確かな技術文書はないのですが、4気筒M111エンジンでは、水温が50度になりインマニが負圧の時にパージバルブが開くようです。

先日、息付きの症状が出たときに、2次エアーの吸い込みを疑ってパージバルブを取り外し何気なく振りますと、横のパイプから活性炭が沢山出てきました。

その時は事情が分からずネットで調べますと、キャニスタが古くなると活性炭が侵入することがあるとのことです。
何故そうなるかは前回の記事のとおりです。

本体の左右のパイプから息を吹き込んでみました。
両方ともスースーです。
バルブが開きっ放しですね。

これでは2次エアーを吸い放題ですので、ヤフオクで買った中古バルブを取り付けました。
ただ、息付きは解消しなかったのですが。

一応、車載分は健全になったので、取り外したものを分解してみました。

全体の形はこんな感じです。

パーツNo. 001 140 80 60

上蓋はパッチン止めで、周囲の爪を細いドライバーでこじると外せます。

逆さまにして振ってみると更に活性炭が出てきました。

中はこんな感じです。

底の周囲に活性炭が複数挟まっています。

クリップの先を曲げて中に突っ込み、活性炭を中央に引き出そうとしたら、逆に外側に押し出して見えなくなってしまいました。

孔の底部は押すと奥に下がります。
スプリングで押されている弁みたいです。

クリップで弁を押しながらバルブをゆすると活性炭が全て見えなくなり、底の弁が手前の筒の底に密着しました。

この状態で左右のパイプを吹くとキャニスタに繋がる側が塞がりました。
これは弁機能が回復したかもです。
ということは中の活性炭を取り出せばまた再利用できるかもしれません。

弁体をつつきながら左右のパイプや中央の孔からコンプレッサーでエアーを吹き込みました。
その後はどう振っても活性炭の音がしなくなったので、おそらく全ての活性炭が飛んでいったのでしょう。

動作チェックしてみました。
実際には7V程度の電圧で作動しているようですので、バッテリーチャージャーの6Vを加えます。

通電するとカチッと音がして弁が下がります。
なかなか俊敏な動きで良い感じです。

本体の下半分がソレノイドらしく、通電と同時に磁力が発生し、弁体を保持しているプランジャが引かれるようです。
構造は簡単なはずですから壊れる要素はなく、活性炭の詰まりがなければ大丈夫でしょう。

さて、中の通路はどのようになっているのでしょう。
本体部分はこれ以上分解できませんので中の構造は想像するしかありません。

これは蓋を外した上からのぞいた様子。

右のパイプから入ったエアーが奥の弁を通って上に流れ、さらに左のパイプからインマニに行きます。

孔の開口の横に1時方向に小さな連通孔があるのがわかりますか。
孔の側面から1時方向に横に出て、開口の縁の外側に通じています。
ここがオリフィスになっているようですね。

ダイアフラムはこんな感じです。

ダイアフラムは本体と蓋の間に挟まって固定されています。
ゴム部分に破れ等はなく十分に軟らかいです。

鉛筆の先のように見えているパーツにダイアフラムの凸部が押し込まれて一体化されています。
鉛筆パーツの中間部にある茶色のドーナツ状のゴムリングが開口を開閉する弁ですね。

バネ等は使われていないので、ダイアフラムは自由にフラフラとしているだけのようです。

蓋には白い多孔質板が挟まっています。

こんな感じです。

多孔質板は、蓋を外す前に外から細いドライバーで押してみたところ、スコンッと内側に外れてしまいました。
内側から外向きにパッチン止めしてありますので、日常整備で不用意に押し込んでしまわないことです。

さて、これらをじっくり眺めてパージバルブの構造を想像してみました。
尚、ソレノイドは全周方向に沢山のプラスチックの爪で止まっているので分解していません。

内部はこんな感じではないでしょうか。

左はバルブCLOSEの状態、右は通電によりバルブOPENとなった状態です。

左図は、例えば、エンジン始動直後の冷間時です。
ソレノイドがOFFなので、弁体は裏側のスプリングによって上の弁座に押し付けられています。
第2弁がCLOSEとなり、右のキャニスタから左のインマニに行く通路は遮断されます。

このとき上のチャンバはインマニからの吸い込みで負圧になり、第1弁が下に引かれて上側の弁座に当たります。

二つの弁がCLOSEとなり、インマニにはエアーは流れません。

一方、右図は、ソレノイドがONとなり、第2弁が下に引かれた状態です。
キャニスタからのエアーがOPEN状態の第2弁を通ってインマニに流れます。

ただし、チャンバは負圧なのでダイアフラムは下に引かれたままとなり、第1弁はCLOSEです。

ここで第1弁と第2弁の間にあるオリフィスの出番です。

オリフィスによりエアーの流通量が絞られます。
インマニに過剰なエアーを供給すると燃料の混合比に影響するからでしょうか。

この図には書いていませんが、実際のパージバルブの側面には小さなイモネジがあります。

このネジの頭はオリフィスの途中に飛び出していて、ネジ込み量を変えてオリフィス開度を調節できます。
ただし、このネジの位置を日常整備で調整する必要はなさそうです。

これに対して次の図は、インマニからのエアーをキャニスタ側に逃がす場合です。

バルブの構造からみて、インマニ側がプラス圧になった場合にはチャンバが昇圧し、ダイアフラムが押し上げられます。
このときダイアフラムの上の緩衝チャンバのエアーが多孔質板から外部に徐々に逃げることでダイアフラムの急激な上昇が抑えられます。
ダイアフラムが急上昇してインマニ側の圧力が急減することを防止するのでしょうか。
それとも多孔質板は単なるフィルタでしょうか。

押し上げられたダイアフラムの上面は蓋の下端の円筒状のストッパに当たり、第1弁はこれ以上開きません。

さらにチャンバの圧力が高まると、次には第2弁が押し下げられ、エアーがキャニスタに排出されます。
このときソレノイドは特にONされることはなく、ソレノイドの下にあるスプリングの強さによって開放圧力が決まっているのだと思います。

パージバルブの働きは大体こんな感じではないでしょうか。

ここまで書いて気が付きましたが、車載状態では上の図の状態ではなく天地が逆です。

構造は極めてシンプルですね。
消耗部品もありません。

時々、双方のパイプから息を吹きかけてみて、開放状態になっている場合には蓋を外して第2弁に詰まっている活性炭を取り出せば復活すると思います。
26年間経過しても割と良好な状態ですのでこの先も大丈夫でしょう。

万全を期すなら、キャニスタとパージバルブの間に活性炭止めのフィルタを挟んでおけばよいでしょう。
これでパージバルブが不調になることはないですし、フィルタに活性炭が溜まりだしたらキャニスタの交換時期がわかって良いと思います。

今回、パージバルブの予備ができてしまいましたが、壊れなさそうなのでこいつを次に使うことはないでしょうね。

山崎

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