W124 チャコールキャニスタのOH
こんにちは
久々の更新です。
本日はチャコールキャニスタの整備です。
DIY整備ですので、交換ではなくオーバーホールです。
チャコールキャニスタは、ガソリンタンク内の余剰の気化ガスを一旦吸着し、運転中のエンジンに投入して燃焼させる装置です。
環境対策の部品であり、走行性能に大きく影響するものではありません。
しかし、これの具合が良くないと例えば車の周辺がガソリン臭くなります。
ウチのもそうなりました。
この車は実に26年間キャニスタの交換をしておりません。
正常に稼働していないことはガソリン臭さから明らかです。
ということで分解してみることにしました。
この図は、W124のキャニスタの配置構成です。
ガソリンタンクの上方空間にパイプが開口してあり、タンク内の圧力が増減した際に、キャニスタとの間で気化ガスあるいは空気を出し入れします。
ガソリンタンクの外にはブリーザバルブがあり、タンク内の圧力が一定以上に高まるとダイアフラムの排出ルートの弁が開いて気化ガスをキャニスタに流します。
逆に、タンク内の圧力が下がった場合には、ブリーザバルブ内の吸引ルートの弁が開き、キャニスタからタンク内に空気が戻ります。
ブリーザバルブが詰まるとタンク内の圧力調整ができずタンクが膨張・収縮します。
特に、減圧時にはタンクが収縮してバコッという音が運転席まで聞こえることがあるそうです。
そうなると、W124のタンクは金属製ですので、しわが生じて穴が開きガソリンが漏れるかもしれません。
できればブリーザバルブに繋がっているパイプを外し、吸ったり吹いたりして双方に通気するか確かめると良いと思います。
さて、チャコールキャニスタです。
パイプが3本繋がっています。
タンクからのパイプ、パージバルブを介してエンジンに繋がるパイプ、ダイアフラムを介して外気に繋がるパイプです。
タンクに繋がるパイプはキャニスタの中ほどまで伸びており、活性炭の中に開口しています。
これにより気化ガスが確実に活性炭に吸われます。
パージバルブに繋がる中央のパイプは、キャニスタ上方の活性炭から離れた位置に開口しています。
エンジン側の制御でパージバルブが開いた時だけ気化ガスがエンジンに吸われます。
この図は、サーモバルブがパージバルブに繋がっているタイプで、エンジン温度が50度になった時点でパージバルブが開くようです。
なぜ50度設定なのかがわからないのでもう少し勉強してみます。
因みに私の4気筒M111エンジンの場合、サーモバルブがなく、パージバルブはECUの制御により開閉します。
エンジン側というのはインテークマニホールドですが、インマニは、例えばアイドリング時や低速回転時のアクセル開度の少ない時にはピストンの吸い込みによって負圧になります。
このような時にパージバルブが開き、キャニスタから気化ガスを吸うようになっています。
このときはダイアフラムに繋がるパイプを介してキャニスタの下部から外気が吸われ、活性炭層を通って上方の開口からパージバルブに流れます。
このときに活性炭に吸着されていた気化ガスが空気に連れ去られエンジンに向かうというわけです。
ダイヤフラムは基本的に外気開放ですが、流路が絞られていて一定の吸排抵抗があります。
キャニスタの構成はこんな感じですが、要するに単なる活性炭ケースのようです。
オーバーホールできるかどうか早速中を開けてみましょう。
先ず、車からキャニスタを外します。
左前輪を外し、泥除けを外しますと、タイヤの後ろに斜めに取り付けられています。
三本のパイプを外し、本体の差込部分を単に引き抜いて本体を取り外しました。
部品番号 124 470 0759
ケースは金属製です。
左の太いパイプがガソリンタンクへ、中の細いのがエンジンへ、右の中くらいのがダイアフラムに行っています。
各パイプはケースの端面に溶接してあります。
底部から1cmのところをグラインダーで切ってみました。
パンチングメタルがあります。
パンチングメタルはケース本体としっかり密着していて動きません。
太いパイプはダイアフラムに行く分の開口端です。
活性炭を取り出すために、パンチングメタルのすぐ上の個所を改めてグラインダーで切りました。
当初の底部から2.5cmのところです。
これは、内部の活性炭を抜いた後の様子です。
左の長いパイプがダイアフラムに繋がるもので、右の奥に見えるのがガソリンタンクに繋がるパイプです。
このパイプは活性炭層の中で開口しますのでメッシュが被せてあります。
尚、パージバルブに行くパイプはパンチングメタルの向こうに開口しており、この二つのパイプの中央やや下方に見えていますが分かりますか。
下側のパンチングメタルの上面位置にあったフィルタです。
殆ど目詰まりを起こしていました。
この目詰まりで思い当たりました。
実は、キャニスタと並行してパージバルブも交換したのですが、パージバルブの弁が閉じなくなっていました。
中を覗きますと活性炭が弁と弁座の間に複数噛んでいたのが原因でした。
(パージバルブについては次回記載します)
つまり、キャニスタの活性炭がパージバルブに侵入していた訳です。
原因はこのフィルタの詰まりでしょう。
殆ど目詰まりしたためにごく一部でしか通気できなくなり、その結果、通気部での空気流速が高まります。
キャニスタの下のパンチングメタルから入った空気が活性炭層の一部の領域を高速で通り抜け、既に摩耗して細かくなっている活性炭が吹き上げられて、上のパンチングメタルの隙間からパージバルブに繋がるパイプに飛び込んだと想像されます。
中から出てきた活性炭の様子はこんな感じです。
予想以上に細かい粒子です。
活性炭はそのままケースの中に詰めてありました。
粒子が細かいのは、長年ゆすられて摩耗したためでしょうか。
これだけ細かいとパージバルブに飛ぶことが理解できますね。
それにしても、上のパンチングメタルにはスポンジフィルタは無いようです。
新品のキャニスタには三本のパイプを閉じるプラキャップが付いているので、新品でも逆さまにすると活性炭がパイプから出てくるのかもしれません。
どして上にもフィルタ付けないのでしょうね。
取り敢えずキャニスタは単にこれだけの構成ですのでDIY再生してみることにしました。
近所のホームセンターでこれを買ってきました。
金魚の水槽に入れる活性炭です。
網状の袋に入って6パックあり、税込み426円。
6パック全てをケースに詰めますと丁度良い分量になりました。
この活性炭もそのうち揺すられて細かくなるでしょうから、上方と下方に出ないように不織布を詰めました。
オイルの廃棄用紙箱に詰めてある不織布を活性炭層と上下のパンチングメタルの間に詰めました。
下側の様子です。
この部分に、切り取った下側のパンチングメタル部分を重ねます。
二つのケースは単に強力ガムテープで巻いただけです。
ケースの内部は常圧かやや負圧なことが多いので二つが分離しなければ大丈夫でしょう。
パンチングメタルが下に抜けないように、念のために、頭を出したパイプにステンレス線を巻いて固定しました。
さらに下方に蓋をします。
透明なプラ板を、ケースの形に合うようにはさみで切り、これをケースの周囲にコーキング材で接着します。
仮にプラ板が吸われてパイプに当たった場合のことを考えて、パイプの先端にグラインダーで通気溝を掘っておきました。
ただ、キャニスタの内部には場合によってはインマニのプラス圧が作用します。
プラ板が口を開けないように周囲をガムテープで止めておきました。
これは単なる気休めかもですね。
完成したキャニスタを車に戻しました。
周囲のガソリン臭は無くなりました。
あとは、こいつの耐久性ですね。
暫くしたらガムテープの具合を確認することにします。
山崎