ベンツ W124 ハザードスイッチの修理
こんにちは
先日、インパネのハザードスイッチランプがウィンカーに同期して点滅するようになりました。
勿論、ハザードスイッチはOFF状態です。
ウィンカーランプ自体がハザード点滅することはないので走行には支障ないのですが、ウィンカーを出す度にインパネが光るのも目障りです。
ウィンカーリレーが壊れたかと思い、手持ちの予備リレーと交換してみました。
しかし症状に変化なしです。
さて、何処が原因なんでしょう。
ネットで検索しますと、ハザードスイッチが壊れた場合にもウィンカーが誤動作するようです。
早速、ハザードスイッチを取り外してみました。
クライメートコントロールパネルを外し、ハザードスイッチを露出させます。
パネルの外し方はネット情報が沢山ありますので省略しますね。
スイッチは8ピンのコネクタで差し込んであり、引っ張ると簡単に抜けます。
こんな感じになってます。
取り外したスイッチを振ってみますとカラカラと音がします。
どうやらコレですね。
スイッチの赤い操作ボタンを外すと中に割れた部品が二つありました。
ネットにもこれと同じような写真がありました。
ボタンの裏には筒状の突起が一体成形されています。
この中にスプリングとピンが挿入してあり、ボタン操作すると突起が傾いてピンが出入りします。
分かり難いので図解してみました。
ケースの中にウィンカーやハザードの端子がありますが詳細は省きます。
スイッチを操作するとケースの中にあるスライダが往復移動するようになっています。
スライダにはハザードの他にウィンカー、ハザードスイッチランプ等の電極端子が取り付けてあります。
スライダを往復させるのは筒状の突起です。
スライダには向き合う面があり、突起がこれらの面を交互に押します。
ボタンを一方に押すと、突起がスライダを一方に押し、その状態でボタンの姿勢が保持されます。
そのために、突起の中にあるピンが働きます。
ケースの底には山形の傾斜面が作ってあり、傾斜面の頂上をピンが乗り越えます。
その時に、ピンはバネを縮めながら頂上を乗り越え、反対に移動するとピンが押し出されて一方の底部に落ち込みます。
この状態でスイッチの姿勢が安定します。
スライダの動きはこのようになっています。
この写真の右のように、スライダが下にある時にハザードとハザードスイッチ照明がONになります。
一方、写真の左の場合には、スライダが上に動きハザードとスイッチ照明はOFFになります。
ウィンカー回路はスライダの位置に拘わらずON状態です。
なぜ、このスイッチにウィンカーとハザードのスイッチ機能が合わせてあるかはわかりません。
筒状の突起が壊れるとスライダを押す部分が欠落することになり、スライダを定位置まで押せなくなります。
また、突起が壊れると中のピンがグラつくようになります。
ピンは一方の底部に当たってバネの状態が安定するのですが、ピンの角度と突起の角度が変わるので突起がスライダの内壁を上手く押せなくなります。
その結果、スイッチをOFFにしてもスライダが一方の端まで押されず、ハザードはOFFになるのですがハザードスイッチの照明端子が接触したままとなり、ウィンカーに同期してスイッチランプが点滅するようになっていました。
このスイッチだと、ボタン操作に応じて突起が傾き始め、ピンが突起の奥に引っ込みながら傾斜に乗り上げ、頂上を超えるとピンが再び飛び出して反対の傾斜の底に移動しスイッチの姿勢が固定されます。
このとき、ピンは移動方向に沿って前後にこじられますが、突起の孔がピンをしっかりとホールドします。
構造的にみて突起の壁にはかなりのストレスが掛かりますね。
また、突起の先端はスライダを押しますので曲げ力も掛かります。
このスイッチは28年前のものですから、流石に突起が疲労破壊したわけですね。
それで思い出したのですが、先日、車線変更時にサンキューハザードを出した後から同期点滅が始まりました。
あのときが限界だったのですね。
症状の理由がわかりましたのでスッキリしました。
さて、修理です。
新品スイッチを買っても良いのですがこれなら簡単に修理できます。
また、修理した方が突起が強くなりそうです。
先ずは、割れた二つの部品を二液性のエポキシ接着剤でスイッチに接着します。
ピンが動かなくなると困るので、突起の孔の中に接着剤が溢れ過ぎないようにします。
次に、突起の周囲に接着剤を少量塗りガラスクロスを載せます。
薄手のクロスで十分でしょう。
突起の側面に塗っておいた接着剤がクロスの目にしみこんで来ます。
突起の断面が四角いので作業は簡単です。
クロスが動き難くなったところで更に少量の接着剤を重ねます。
端に白い部分が残ってますが、ここは後でカットする部分なのでこんな感じで良いでしょう。
接着剤を翌日まで硬化させ、余分なクロスをカッターナイフで切り取りました。
ピンとスプリングです。
硬化・整形後にピンとスプリングを挿入しスムーズに動くかどうか確認します。
動作OKであればボタンをスイッチケースに取り付けて終了です。
壊れてからでも修理は簡単ですが、壊れる前に突起をガラス繊維で補強すればオリジナルより強くなり、殆ど壊れなくなるでしょう。
新品で買っても数千円ですが、この車の当初からの部品ですから長く使いたいものです。
このスイッチの構造からみてパチンと勢いよく切り替えると突起への負荷が大きく疲労破壊を早めてしまいます。
できるだけゆっくり押すことが長持ちさせる秘訣でしょうね。
ギアシフト時のニュートラル位置での一呼吸、低速でのシフトショックを和らげるためのアクセルワーク、窓ガラスの閉じ位置での寸止めなどW124の作法は沢山ありますが、このスイッチ操作もその一つでしょうか。
山崎