ベンツW124 エンジンOH (3/10) ヘッド分解

今回はヘッドの分解です。
まずは、ヘッドを取り外したシリンダーブロックの様子です。



手前が前方部、つまり1番シリンダーです。
ヘッドを外した直後なので1番シリンダーの上面に冷却水が載っています。
ガスケットの腐食も少なく良い状態だと思います。
ピストンは4番が最も汚れていましたが、表面の凹凸形状もまだはっきり見えるのでgoodです。



ヘッドのバルブ面です。
左が1番です。
上列のバルブ径がやや大きいのがインテーク側です。
ガソリンの混じった吸気が通りますので、やや湿った感じで黒くなります。

一方、下列の排気側は、主に高温の燃焼排ガスが通りますので乾いた状態に焼けています。
きっと双方のバルブの材質も違うのでしょう。

このヘッドからバルブを外します。
それにはバルブスプリングを縮める専用工具を使います。

5種類付属しているコマのうち左から二つめを使います。
これは、バルブスプリングの押えワッシャのサイズによって決まります。


バルブの面とスプリングの押えワッシャとを両側から工具で挟みます。
右の棒ハンドルを回すとスプリングが縮まり、バルブの軸端が押えワッシャから飛び出してきます。
適度に飛び出した状態で、軸の外面に嵌め込んである半割り状の二つのコッターを外します。


真中の丸いのがバルブ軸の端面で、その下側に少し離れかけているのが一方のコッタです。
バルブ軸の側面のうち上側にはまだ他方のコッタが乗っています。
この二つのコッターが合わさると釣り鐘のような円錐形になり、押えワッシャ内面のテーパー面に当たって押えワッシャが軸端に抜け止め固定されます。

これら二つのコッタを磁石でくっ付けて回収し、専用工具を緩めてスプリングを伸ばします。
これで押えワッシャとコイルスプリングが外れます。
一カ所外すのに約5分。
これを16本分行います。


外れたバルブとスプリングです。
同じ場所に戻すために、各バルブは取り付けまでこの箱の上で管理します。


バルブを取外したヘッドの下面です。
バルブの軸を通す穴が見えますが、これはバルブスリーブと言ってヘッドのアルミ素材とは別の固い金属部品です。
バルブ自身も硬い金属でできていてバルブスリーブの孔と軸との隙間はほんの僅かです。
そうでないと開閉するバルブが傾き、バルブの縁がポートの定位置に当たらず圧縮漏れが発生します。
孔の内面は、部材どうしがいつもスライドしているので綺麗に光っています。


バルブスリーブの反対側には、バルブスリーブと軸との隙間をシールするステムシールが取り付けてあります。
こいつは新品交換しますので、先の長い適当なペンチで引き抜きます。
専用工具ではないので、ステムシールの一カ所を強く挟んだりしてステムシールが壊れてしまいます。
まあ、交換するので構いません。
因みに上の四つは交換用の新品です。

エンジ色の部分はゴムで、バルブの軸に密着し、圧縮漏れを止めつつオイルが燃焼室に入る所謂オイル下がりを防止します。
オイル下がりの場合、排気ガスが白くなりオイルの減りが速くなります。
エンジ色の部分に巻き付いている銀色のヤツは小さなコイルバネをリング状にしたもので、ゴムの内周面を常に軸の表面に押し付けるようになっています。
これでヘッドから全ての部品が外れました。

さて、ここまで述べ4日、約2週間が経過してしまいました。
ここからようやく洗浄モードに入ります。


まず、ヘッドを洗浄剤にドブ付けしてカーボンを溶かします。
サンエスエンジニアリング製のメタルクリーン(粉洗剤、送料込みで一箱2,000円ほど)がとても便利です。
これの一箱を衣装ケースに貯めた水に溶かし、ヘッドを一昼夜程浸けておきます。
これで大体汚れが落ちるのですが、厚く堆積したところは時間がかかるので、時々、外に取出してワイヤーブラシなどで擦ると綺麗になります。

因みに、さらに手軽に安く済ませようとするとマジックリンがお勧めです。
衣装ケースの水にマジックリンの替えボトル500mlを2本混ぜても結構よく落ちますよ。

エンジンのオーバーホール作業は、その多くが洗浄作業です。
実はここからが大変なのです。
次回は、取外したバルブをクリーニングします。

つづく

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