ベンツW124 エンジンOH (7/10) スロットルボディ

今回のエンジンOH作業はもう少し続きます。
本日はスロットルボディの手直しです。


スロットルボディは、インテークマニホールドの入り口に付いていて、アクセルの開度に合わせてバタフライが開き、適量の空気をインテークマニホールドに送り込む部品です。
M111エンジンのスロットルボディは、通常運転中はアクセルワイヤーの操作で動きます。
ただし、エンジン始動の冷間時などには、アクセルを踏んでいなくても内蔵のモータが動いてバタフライの開度を調節します。

内部には回転スライド基板を持つセンサーが組み込まれていて、バタフライの開度を検出して信号をエンジンコンピュータに送ります。
エンジンコンピュータは、その信号に基づいて燃料ポンプの流量を決め、さらに、カム軸の回転位置情報などをも加えて点火時期を調節します。
エンジンが快調に回るためには、燃料・空気・点火時期がバランスしていなければなりませんが、スロットルボディは基本情報を送信する重要なパーツです。

しかし、この部品、ハーネスが腐るのです。

1995年頃までに生産された全てのメルセデスのエンジンにおいて、スロットルボディとエンジン全般のハーネスは熱で劣化します。
ウチのも例外ではないはずですのでこの機会にハーネスを交換することにしました。
新品調達の手もあるのですが、パーツコストが異様なほどに高騰していますし、そもそも自分で触るのが最大の楽しみでもあるので迷いなくDIY作業開始です。


いきなり内部の写真です。

本体横の黒いカバーを外します。
開封し難いようにトルクスのビスが使われています。

スロットルボディにはコネクタから8本のケーブルが入り、更にボディ内部に2本のケーブルがあります。
予想どおり全てのケーブルの被覆がこのようにひび割れています。

幸い、被覆がまだ付着していて隣のケーブルとショートはしてはいませんが取れるのも時間の問題でしょう。
スロットルボディやエンジンハーネスがショートするとエンジンコンピュータも壊れてしまいます。


ケーブルをボディから外し、中を確認してみました。

大変なことになってます。

一番外の黒いチューブから各線を取り出すときに被覆がボロボロと剥がれます。
もうここまでやってしまうと後戻りできないですね。
以前はケーブルだけの部品供給があったようですが今はありませんので自作するしかありません。


ケーブルを入れ換えるにはコネクターの再配線も必要です。
ただし、コネクターは分解することを考えていないのでチカラ技で開けるしかありません。


コネクターの根元でケーブルを切り、ケースの外皮部分を縦に切ります。
オルファのホビー用の鋸刃が便利でした。

中まで切り過ぎないように注意します。
そこそこの深さまで切った後、キリ目にマイナスドライバーを差し込んでコジリ、最後の皮一枚を切り離します。
約30分ほど作業してこのように割れました。


コネクター内部のホルダを取出しました。

ホルダは周方向に沿って蛇腹の様になっていて、8本のピンは径方向に外すようになっています。
ピンに対して直角外向きに力を掛けるとスリットが広がってピンが外れます。


なかなか作り込まれたピンです。
金属素材を旋盤で削り出しています。

一方の端面にはケーブルを挿入する孔があり、挿入したケーブルにハンダを付けやすいように側面に穴が開いています。
しかも両サイドの孔の大きさが違っています。
一方はハンダ供給用の孔、他方は空気抜き用の孔でしょうか。

この構造だと奥が地獄にならないので、ケーブルをハンダ付けしたときに、大きい方の孔から供給したハンダが直ぐに反対側に回りました。

他方にはコネクタの相方のピンが差し込まれる孔が設けられています。


孔の中を覗いてみて驚きました。

1mm程の孔の中に、さらに、ピンを挟む筒部品が仕込んであります。
この筒部品には縦に切目が入っていて、しっかり拡径・収縮します。
コネクタというのは一般的にここまで細かい構造になっているのですかねえ。
そうでないとすればメルセデス恐るべしです。


交換するケーブルです。

これにはネット情報を活用しました。
メインのケーブルとしては他の方の例に倣い、素線断面 0.5平方mmの8芯線を準備しました。

尚、電源用の2本はオリジナルでも太い線が使われており、この8芯線では心もとなかったので、別に12V用のケーブルを準備しました。
何のことはない、ヨドバシカメラで買ったパソコン用の12V電源分岐ケーブルです。
しかも、長いのがなかったので、内包されていた30cm長さの4本を繋いで使いました。


このように8本のうち6本だけ端部を加工します。


狭い場所ですが、隣のランドにショートしないように何とかハンダ付けしました。
基板の他の部分に過剰な熱が行かないようにと、つい焦りがちになりました。
後でこの写真を電気の元プロの知人に見せましたら、線の輪郭がまだ見えるからハンダの盛り付けが甘いのではないかと指摘を受けました。
確かに素人DIY感満載ですね。
既にエンジンに乗っていますが近々に補修することにします。


ケーブルを繋げたコネクタの先端部材です。
電源ラインの2本が不細工ですね。
まあ、売り物ではありませんから良しとします。


先に二分割したコネクタのケースを、この先端部材の両サイドを挟むように取り付けます。
ケースどうしの接着には、また取り外すこともあるかもしれないのでシリコンシーラントを使いました。
コネクタの先端側はメスの相方に挿入されるので広がることはないのですが、ケーブル側の広がりを止めるためにステンレス線で一回巻いておきました。

ハーネス全体は、縦割りの蛇腹カバーで覆います。
ちょいとサイズがキツめで少し口が開いてしまいました。
カバー自体に保形力があるので中のケーブルが飛び出てくることはなさそうですが一応タイラップで部分止めしておきました。

これで一応の作業終了です。
各線の接続位置と導通をクドイくらいに確認しましたので、これでちゃんと動いてくれるとは思うのですがどうなりますやら。

内部構造の検討やら部品の手配やらでスロットルボディに約一週間掛かりました。
ここまでで述べ四週間が過ぎましたが、各部品の組付け復旧作業などもう少時間が必要です。

つづく

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