ベンツW124 エンジンOH (8/10) 組立て

取外した部品の処理が終わりましたので、これらを取り付ける前にエンジン側の準備をします。
まずはシリンダブロックの合わせ面の清掃です。


合わせ面に付いている茶色いのは錆びではなく劣化したガスケットの残り粕です。
これは完全に取り除きます。
合わせ面に少しでも凹凸が残っているとガスケットが密着せずオイル漏れの原因になりますので。

冷却水やオイルの流通孔の全てに布を詰めて養生します。
この状態では1番ピストンと4番ピストンが上死点に来ているのでこれも清掃します。

ヘッドの合わせ面はスクレーパーで汚れを削り取ります。
それでも微かに汚れが残りますので800番のペーパーで除去しました。

ピストンの上面は、スクレーパー、ワイヤーブラシ、電動ブラシ等を使って綺麗にします。
1番・4番のピストンが綺麗になったら、2番・3番のピストンを上死点に合わせます。
クランクシャフトのナットに27mmソケットを嵌め、ラチェットハンドルでグイッと回します。
シフトはパーキングに入れたままですが、ATですからクランクシャフトは自由に回ります。

ただし、タイミングチェーンがクランクギヤから脱落しないように注意します。
タイミングチェーンはチェーンカバーの下の方でクランクギヤに噛んでいます。
尚、この状態では噛んでいる状態が見えません。

もし、チェーンがクランクギヤから脱落すると、次ぎに噛ませたときに同じ状態に噛むとは限らず、位置ずれするとカムシャフトとの間に付けた合わせマークの意味がなくなります。
ですので、ラチェットでクランクギヤを回すときにはタイミングチェーンを上に引っ張り、クランクギヤから離れないように注意します。
クランク軸を回転させた後は、チェーンをエンジンブロックの一部に針金で固定し、チェーンがクランクギヤから脱落しないようにしておきます。

本来、クランク軸や二本のカム軸には基本位置を示す合わせマークがあります。
このエンジンだとカムシャフトプーリの0度目盛りをエンジンブロックの指標に合わせ、2本のカムギヤに設けてある確認用の孔をエンジンヘッドの枠の上面と同じ高さに合わせれば夫々の位相が合います。
しかし、カムギヤの位置合わせ用の孔位置がなんとなくアバウトで、見ようによってはチェーンの溝の一つぐらいズレてもわかりません。
不安になりましたので、当初の状態をキープするのが一番確実と考えたわけです。
まあ、プロの整備士にとっては、可愛らしいことやっとるね、ということになるのでしょう。

ということで綺麗になりました。


でも、隅がまだ茶色いじゃないか!
確かに。
写真に撮ると目立ちますね。
ということで、この後、もう少し綺麗にしました。

合わせ面が終わりましたら外側を綺麗にします。


思えば26年間、エンジンなんて気合を入れてクリーニングしたことがなかったです。
エンジンは汚れるものと思っていましたからね。

今回、ヘッドから上が綺麗になったので下側も綺麗にします。
ヘッドやエキゾーストパイプがないので手が入り易いですし。

クリーニングと言っても特別なことはやりません。
マジックリンを拭き掛け、歯ブラシで擦り、水をスプレーして汚れを流します。
これを何度かやると見違えるほど綺麗になります。
マジックリン、油汚れ落としにはコスパ最強です。

歯ブラシの先が入らないような狭い所はパーツクリーナーを拭き掛ければ綺麗になります。
エンジンの外面を綺麗にしておくと、この後のオイル漏れチェックが簡単になります。

このように外側のクリーニングが終わりましたら合わせ面に新しいガスケットを乗せます。


もう次にはこのガスケットを見ることはないかもですね。
表裏に異物が残っていないか再確認してヘッドを乗せます。


ヘッドを乗せ、新品のセットボルトを10本締め込みます。
取外し時の反省からトリプルスクエアーのビットを使い、トルクスの全溝を使って締め込みました。
中央のボルトから端のボルトの順にというのが決まりです。

整備マニュアルによる締め付けトルクは、まず55Nmで締めたあと90度の増し締めを2回行えとなっています。
で、やってみたのですが、どうも固そうで無理です。
1回目の90度を増し締めする途中で前回の嫌あなハンドルの撓みを感じてしまいます。

どうしたものか。
整備書通りに思いきって締めるか。
でも、エンジンブロックのネジを壊してしまうかも。

と暫く考えまして、110Nmで締めて様子をみることにしました。
もし、オイルが沁みだしてきたら増し締めしましょう。


チェーンの噛み位置を合せつつカム軸を固定します。
さらに、チェーンテンショナーをシリンダブロックの側方から差し込んで取り付けます。


エキゾーストマニホールドを取り付けるために新しいガスケットをセットします。
マニホールド用のボルトは、熱で表面が錆びてガサガサになっていましたので、ダイス加工してネジ表面を整えてあります。


マニホールドが取り付きました。
これは熱で錆びてしまうので、特に表面塗装などはしておりません。


反対側にはインテークマニホールド用のガスケットをセットします。


マニホールドを取り付け、燃料を供給するインジェクタのパイプやメインハーネス、スロットルボディ取付用の新しいゴムブロック等も取り付けます。


カムカバーの裏面に、プラグホールの周囲をシールするシールリングを4個取り付けます。
周りが金属で補強してあり、カムカバーの孔に嵌め込む構造ですが、これがどうしても嵌まりません。
仕方がないので周囲をヤスって少し小径にしプラハンで打ち込みました。
カムカバーの周囲のシールゴムも新品交換です。


カムカバーの固定ボルトを規定トルク9Nmで取り付け、プラグを取り付けたのちプラグコードを繋ぎます。
今回、プラグコードも新調しました。


燃料タンクに繋がる行きと帰りの燃料ホースも新調です。
前の燃料ホースはカチカチに固まっていて弾力が全くなくなっていました。

DSC_0095

スロットルボディを取り付け、アクセルワイヤー、クラッチワイヤー、ラジエーターホースなども繋ぎ終えました。
復旧終了です。
ここまで述べ10日、5週間。
やっと終わりそうです。

明日は、ラジエータに水を入れて試運転です。
ドキドキします。
上手く回ってくれるか今から大変緊張します。
散らかした工具なども綺麗に整頓して試運転に臨みましょう。
衣装ケースに溜めていた洗浄液も捨てましょう。
と、衣装ケースに手を掛けたときです。

うん、これ何?


事件発生です。

つづく

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