ベンツW124 エンジンOH (10/10) 不具合探求

こんにちは

とうとうこのシリーズ10回目になってしまいました。
予定では最終回です。
ですが、試運転は完了したのですが実は未だ完調ではありません。

先日、福井まで名神・北陸を往復しましたら、ちょうど100km/h・2500rpmで息つきが出るのです。
100km/hになった途端に、ご存知の方はわかると思いますがトラックの排気ブレーキを踏んだような感じで減速しハンチングします。
そこを頑張って踏み込めば回転数は上がるのですが安定性がありません。
引き返そうかと思いましたが、95km/h以下では快調なのでそのまま走りました。
追い越しは一切なし、ひたすら速度計を95km/hにキープです。
往復400kmでしたが、やってみるとそれはそれでのんびり走れてとても快適でした。

さて、症状ですがこんな感じです。


大変不思議です。
分解前はこのような症状はありませんでした。
分解前と変わっているのは、スロットルボディの配線が新しくなっていることです。

配線を間違えたか?
いや、それなら95km/h以下でも症状が出るはずです。
ただ気になるのは、古い配線をボディから外すときに、配線クリップをボディに止めているピンを抜くためにボディを数回叩いたことです。
この衝撃でボリューム基板のスライド抵抗膜が傷付いたかもしれません。
その場合、スロットルボディからの出力値が変わる可能性があります。

別の原因としては、吸気側と排気側のカムタイミングのずれが考えられます。
組付けは、分解前に付けたタイミングチェーンとカムスプロケットのマークを合せました。
しかし、本来基準にすべき、クランクシャフトを20度に固定したときの両カムスプロケットとエンジンヘッドとの位置合わせは完全ではありません。
吸気側スプロケットは基準位置に合いますが、排気側スプロケットは少しズレています。
ただ、ここがおかしいとすれば95km/hまで調子よく走ることはないと思います。

それから、6週間のあいだ燃料パイプとインジェクタが乾燥状態になっていたので、インジェクタの先にゴミが詰まったりして高速走行で燃料噴射の状態が変わっている可能性もあります。
しかし、このM111エンジンは、インテークマニホールドの分岐管に燃料を噴射して混合気を作り、それを燃焼室に入れるので、高速域で燃料の出が悪くなった場合でも、今回の様に急激に回転数が落ちることはないはずです。

息つきするのは、エンジンが回るための三要素、つまり、燃料・空気・火花のどれかに問題があるのですが、特定回転数だけという点からすると燃料系が一番怪しい気がします。
それでもいろいろと原因が考えられますので一つずつ疑問を潰していくしかありません。

ということで順番に原因探求を始めました。

先ずは、一番の懸念であるスロットルボディを交換してみました。
新品は10万円を超える高額部品ですのでそれはあきらめ、運よくヤフオクで見つけた中古品を付けてみました。



かなり期待したのですが全く改善されませんでした。

ただし、自身の配線作業が上手くできていたことが確認できたのは良かったです。
スロットルボディは同型車の約束の故障箇所でもあるので予備が手に入ったのでこの先も安心です。

次に、年式が古いということでコンピュータを疑ってみました。


こいつです。
エンジンルームのバッテリーの後ろにあるMSEというモジュールです。
経年劣化で基板の部品が壊れている可能性があります。

内部はこんな感じです。


このうち、二つの青い電解コンデンサと二つのオレンジのタンタルコンデンサが怪しいです。
これらは使用寿命のある部品ですので全て交換します。


基板どうしがハンダ付けしてあり、タンタルコンデンサの一つが縦の小さな基板に付いています。
このままでは作業できないので、まず小基板を外します。
32本のピンがハンダ付けしてあるので、基板に熱を入れ過ぎないように全てのピンのハンダを溶かし銅製のハンダ吸取線で除去します。
1時間くらい掛かりましたが無事に外れました。
このあと全てのコンデンサを取外し、一応、各コンデンサの静電容量を計ってみました。


黄色が規定値ですが何れも増加傾向にあり、特に、オレンジのタンタルコンデンサの誤差が大きくなっていました。
10μのものは測定不能で完全にアウトです。

26年も使っていますので当然にコンデンサの機能が低下して数値は大きくなります。
このテスターは所定電流をコンデンサに流しコンデンサが満タンになるまでの時間を測定しているようですが、機能低下により抵抗増大や電流の漏れが発生して満タンになるまでの時間が長くなります。
その結果、沢山の電荷を貯めることができるような結果が出てしまいます。

ただし、青い電解コンデンサは年数のわりに誤差が少なく、胴体の膨らみやビニールの縮みもありません。
電解液の漏れもなく予想以上に良い状態でした。
一応不具合が見つかりましたので、これらコンデンサの入れ替えで治るかもしれません。

大いに期待して試運転してみたのですが、またもや改善せずでした。
ただし、アイドリングの回転ムラが少し減ったことは収穫です。

次は、燃料系です。
燃料が十分に供給されていないかもしれません。
燃料ポンプと燃料フィルターを長年交換していなかったので新品に変えてみました。

これらは車体の下面にあります。
燃料ポンプは燃料タンクに直結しているので交換作業時には燃料タンクを空にする方が安全です。
仮栓をしていても作業中に燃料が勢いよく落ちてくるかもしれないので。

最悪なことに燃料タンクが満タンだったので、ホームセンターで携行缶を買い、給油口にチューブを差し込んでサイフォンの要領で抜けるだけ抜きました。
それでも残った分はステンレス製の桶を使って車の下側で受けました。


まず、ブロックと自作の木製スロープを使い、スイッチバックで後輪を上げます。
これですとブロック2個分の高さが簡単に稼げますし、車輪が接地しているので安心して車の下に潜ることができます。


燃料ポンプからホースを外した途端に残りのガソリンが勢いよく出て来ました。
2~3リットル出て止まりました。

この作業で恐ろしいのは引火です。
抜き取り作業中に指先から静電気火花が飛ばないように、ガレージの柱を頻繁に触って静電気を除去しました。


新旧のポンプとフィルタです。
フィルタのサイズが最近のものは一回り大きくなっています。
外でユニットに組んでおきます。


ユニットを吊りゴムで床下に固定したあと配管を接続します。
取付作業自体は難しくないのですが、ガソリンが漏れないように配管の止めネジの締付トルクに気を付けます。

燃料ポンプ交換のついでに、これまで少しうるさかった社外のマフラーを純正の中古マフラーに入れ換えました。
といっても全長約5mのうちの後半部分だけです。
スロットルボディを購入したショップにあったので合わせて買いました。


少し錆びていたのでワイヤブラシで掃除したあと耐熱塗料を塗りました。


差し込み式の前端部をボルトで繋ぎ、中央と後方の2箇所をゴムベルトで吊ります。
中央の吊りゴムが破断していたのでシュテルンで新品を購入しました。
吊りゴムの切れに気が付いて良かったです。

抜き取ったガソリンを戻し、約一日の作業が終わりまして試運転してみました。
が、またしても改善ならず。
マジかよーーー。

ただし、常に鳴っていた燃料ポンプの「ジー」という唸りが消えたので今後の故障のリスクは減りました。
それと、中古とはいえ純正マフラーの大変静かなこと。
社外マフラーに変えてから5年間気になっていたボボボボ音が無くなり大変嬉しいです。

さて、他の原因ですが、考えられるのは燃料圧力調整弁です。

こいつは四つのインジェクタに燃料を供給するパイプの端に付いていて、余分な燃料を燃料タンクに戻すための開閉弁です。

DSC_0109

内部にゴム製のダイヤフラムがあって空気室と燃料室に仕切っています。
ダイヤフラムの中央に弁がついており、普段はバネで押されて燃料室にある燃料の戻り流路を閉じています。
エンジン運転中に燃料の圧力が過度に高まると燃料の圧力でダイヤフラムを押し返し、弁を開いて余分な燃料をタンクに戻します。
これにより過大な燃料が供給されることがなく回転数が安定します。

一方の空気室はインテークマニホールドとパイプでつながっていてインマニの負圧が掛かります。
例えば、アイドリング中にはインマニは負圧になりますが、回転数が低いので燃料の噴射量は少なくする必要があります。
空気室が負圧になることでバネに逆らってダイヤフラムが引かれ、燃料圧力の少しの上昇でも弁が開き易くなります。
これにより、燃料消費の少ないアイドリング状態等でも燃料圧力が安定し、エンジン回転数が落ち着きます。
一方、エンジン回転数が上がると場合によってはインマニに圧力がプラス圧になりますが、高回転の時にはインジェクタからしっかりと燃料を噴射しなければなりません。
この場合には、プラス圧がバネの力に加わり、弁の開きを抑制して燃料を確実にインジェクタに送ります。

この調整弁も26年選手ですのでバネがくたびれて誤動作しているかもしれません。
ということで新品に交換しました。
作業自体はCクリップを外して調整弁をケースから抜き取り新しいのを差し替えるだけです。
事前に燃料タンクの蓋を開けただけで調整弁を抜いたので思いのほかガソリンが漏れ出しました。
エンジンが熱い状態でこの作業を行ってはいけませんよ。

今度こそはと思いつつ始動しましたが、またしてもダメです。
どういうこっちゃねん!

予想される原因が減っては来たのですがまだ幾つか残っています。
次に考えられるのがアレです。

エアマスセンサです。


これは、インテークマニホールドに行く空気量を測定してコンピュータに信号を送る部分です。
空気流路の真ん中にセンサを突き出しておき、センサの表面にプリントした発熱線に電流を流して加熱しながら空気流で冷却させ、温度変化の具合から空気量を演算するものです。
アクセル開度に応じて空気量が変わりますので、コンピュータはエアマスからの信号に基づいてインジェクタに動作信号を送ります。
インジェクタでは単位時間当たりの動作回数を変化させて適量の燃料を噴射します。

これも経年劣化やセンサ表面の汚れにより高確率で故障する部品です。
半分やけくそで、またも同じショップから出ていた中古品を購入し取り換えてみました。

が、これも変化なし。
・・・・・・・。

これまでで交換すべき部品は殆ど変えたことになります。
イグニッションコイルがまだですが、2500rpmのピンポイントで症状が出ることは殆ど考えられません。

エンジン組み立て後の試運転から既に一月が経ちました。
これだけやっても不具合が消えません。
しかし症状は完全に再現性をもって現れます。
オーバーホール作業で何かやらかしていることは間違いないのですがそれが何なのか。

もう暫く悩みは続きます。

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