風車

所用で高松に行った帰りに少し時間があったので風車を見てきました。
淡路島北淡町震災記念公園です。
ときどき淡路島を走るたびに遠くで回っていて気になっていたのです。

高速道路を北淡インターチェンジで降り、海沿いに北上しました。
高速道路から見えていたのは山の上の風車列だったのですが、そこに向かっているうちに街中で回っている一基を見つけました。

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なかなかの迫力です。
風車の詳細です。
直径は45m、1.5m/秒以上の風で回るとあります。

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後ろから見るとこんな感じ。
支柱の真下まで行くことができます。
風車は風に正対するように首を振りますが、このときは南西を向いていました。

それにしても実にシャープなブレードですね。
平面形は細長く所謂アスペクトレシオの大きな形状です。
翼端は鋭く尖っていて下の写真のアホウドリの翼に似ています。
翼端が尖っていると、翼端から後方に発生する翼端渦が少なくなって抵抗が減り滑空性能が上がります。

アホウドリは鳥類の中でも滑空性能が抜群で、1m落ちる間に20mも飛ぶことができます。
ちなみにスズメは1m落ちる間に4mしか進みません。
飛行機では、エンジンが止まったとして、セスナが7m、ジャンボジェットが17mです。
もとから滑空目的で作られたグライダーですと、練習用のものは30~40m、競技機ですと50mを超えるものもあります。

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真下から見上げるとど迫力です。
ブレードの先端は頭上15m程のところを通りますが、当たりそうで怖いです。
また、翼端の薄いこと。
捩じれ角度があるのかないのかわかりません。
回転時の抵抗を極力減らす設計がされているのでしょうね。

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実際はどんなやねんということで動画を用意しました。
できればボリュームを大きめにしてみてください。
グワーンという連続的な機械音に混じって、ブレードが通るたびにブワッ、ブワッと風切り音が聞こえます。
さらに特定の一枚のブレードが通過するときにヒュッという鋭い風切り音が聞こえます。
風がもう少し強いとどんな音になるのでしょうね。

windmill

このときの翼端速度を計算してみますと、
外周軌跡が141.3mで一回転が4秒ですから時速127kmです。
セスナの巡航速度ぐらいです。
バッティングセンターで120キロのボールが真近を通るともっとすごい音がしますが、さすがエネルギー変換を使命とする風車のブレードだけあって静かなんですね。

追記

風車の翼型について少し調べてみました。

この風車は2002年に某重工メーカーが製造したものですが、この会社の最近の公開公報で特に騒音低下を目的としたものがありました。

ざっと紹介しますと、
「風車の出力はブレード直径の自乗で効くため、多くの電力を得るには風車を大きくすればよい。
ただし、直径が大きいとブレード先端の周速度も大きくなるから騒音が増える。

騒音はブレードが空気を切り裂く際の空気状態に影響されるため、本技術では回転中心から先端側にいくほどブレードの断面厚さが最大となる位置を翼の前側にシフトさせた。

こうすると、ブレードの先端側では最大厚の位置から後縁に至る領域が広くなり、ブレードの断面厚さが後縁に向けて薄くなる程度を緩やかにすることができる。
この結果、ブレード表面に接する空気の境界層厚さが減り、つまり、空気を切り裂く際の抵抗が少なくなって騒音が減る。

尚、ブレードを作る場合、回転中心から先端に向けて桁という骨組材を設けるが、この桁が直線形状であれば製造が楽になる。

そこで真っすぐな桁を用意し、翼厚の最大位置が桁の位置に合うように中心側から先端に向けて翼の形状を設定する。すると、先端側の領域では、ブレードの前縁が桁にグッと寄り、後縁は桁から後ろに離れたものとなる。

ブレード先端での空力抵抗を減らすためには空気渦の発生を減らす必要があるが、そのためには例えばブレード先端を尖らせればよい。
この先端位置は桁の先端となるが、後縁のラインをブレード先端に繋げようとすると後縁のラインは前側に切り上がったカーブとなる。

騒音は主にブレードの後縁で生じるが、このように後縁がカーブすることで音の発生領域がブレード先端から回転中心側に広がり、騒音をさらに下げることができる」

というものです。

見た目は単純そうな形状ですがやはり奥深い理屈があるのですね。

山崎

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