ROLEX オーバーホール 1

こんにちは
知り合いの方のロレックスをオーバーホールすることになりました。
EXPLORER  Ref.14270 世間で言うキムタクモデルです。
10年ほど使い続けていてバンドの具合も悪いとのことです。

EXPLORERは一度触ってみたかった時計なので是非にということでみせて頂きました。

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カレンダーがなくとてもシンプルです。
6時側のフラッシュフィットが開いてしまっています。
これでは服の裾を引っ掻けてしまいますね。
ケースの表面にはそれなりの小傷がありますが大きな打ち傷はありません。
サファイアガラスもとてもきれいで丁寧に使われていたことがわかります。

まずはベルトを外して外観チェックです。

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おーー、来てますねえ。
10年も使っていると大体このようになります。
リューズの周りなどにも汚れがびっしりと溜まっています。
もしかすると10年のあいだベルトの掃除などもされていなかったかもしれません。
でも、このように汚れている時計ほどワクワクします。

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フラッシュフィットの一つが壊れていました。
服に引っ掻けたりして広がったのでしょう、バネ棒を挿入する筒部品が切れてしまっています。
本来は丸ごと交換ですが、全体の形を整えて、筒部品を元のように成形するだけで実使用できそうです。

さて、裏ブタを開けて少しずつ分解します。
ROLEXは裏蓋を外すのに専用の工具が必要です。

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このように裏蓋の周囲に刻まれたギザギザに合わせたソケットレンチがあります。
ソケットレンチは各種モデルに合わせて複数のものがセットになっています。

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このように、時計ケースに合わせて木に雌型を彫り込み、傷が付かないようにビニールを挟んで固定します。
裏蓋にレンチを押さえ付けながら回します。

さて中身が見えました。

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左上:自動巻きのローターを外します。

右上:時計の心臓部であるテンプユニットを外します。
このムーブメントはCal.3000といいまして、テンプを片持ちのアームで押さえています。
多くの時計が片持ちアームです。
ただし、改良された現行のEXPLORER Cal.3130では、両持ちアームの中央でテンプを押さえるようになっています。

十字形の腕を持つテンプには細い細い渦巻バネが取り付けてあり、この渦巻バネが巻かれたり解かれたりしてテンプが左右に往復振動します。
この時計では1秒間に8往復です。
テンプの周囲に小さい四つのネジが中心向きにねじ込んでありますね。
これを中心側にねじ込むと振動数が増え、外側に出すと振動数が減ります。

テンプには錨のような形をしたアンクルが繋がり、さらにガンギ車という鉤のような腕が沢山ついた歯車が連係していて、テンプの1往復ごとに歯車が一つ送られ時を刻みます。

どのように動くかは以下の動画を見てください。

左下:ムーブメントをケースから取り出し、針を外した状態です。
生の文字盤はケースから出したこの状態でしか見ることができません。
写真ではわかりませんが、漆塗りのような正に漆黒の塗装で眺めていると吸い込まれそうです。

右下:文字盤を外すと表側はとてもシンプルです。
中央の金色の歯車が短針用のもので、中心にある筒部分に短針の孔が嵌まります。
時計の針は全て軸に対して摩擦で止まっているだけです。
短針軸の中に長針用の筒歯車が入っており、さらに、その中に秒針用の軸が通っています。
秒針用の軸は裏側にある歯車から表側に貫通していて髪の毛ほどの太さしかありません。

ムーブメント動画

さて、分解していていて気付いたのですが、この時計には過去に修理歴がありました。

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ローター受け座の中段部に黄色い環状の傷があります。
これは以前にローターの軸が壊れ、ローターの裏面で受け座が削られた跡です。
今は正常でローターの擦れはありません。

次はさらに分解していきますね。

山崎
あみ知的財産事務所

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