ROLEX オーバーホール 2

こんにちは
分解を進めますね。

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左上:ゼンマイからガンギ車まで動力を伝える歯車を外します。
ただ、孔から引き抜くだけです。

右上:ガンギ車を抜き、受け板を外してアンクルを抜きます。
アンクルの先には二つの小さなルビーが付いています。
夫々のルビーがガンギ車の歯と交互に噛み、ガンギ車がgo-stopを繰り返します。
ルビーはエッジの効いた角柱状で、ガンギ車の歯を何十年間受け止めても摩耗しないようになっています。

左下:ゼンマイ受けを外します。
黄色い円盤状のものを香箱といい、この中にゼンマイが入っています。
香箱の外周には動力を伝える歯車が付いています。

右下:香箱を持ち上げて抜きます。
香箱の軸には大きな荷重が掛かりますので、軸の両端を受ける孔にもルビーのリングが入っています。

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全部の部品です。
ある程度の部品の集合部分は組んだままなので意外と少ないですね。
これでも、必要な洗浄・注油は全て行うことができます。

香箱を開けます。

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10年も使っていると中のオイルは枯れていますね。

時計のリューズを巻くと中央の芯が回転し、周囲にあるバネが中央側に集まります。
そうするとバネが解けようとしますが、中央の芯は逆回転できないようになっているので香箱全体が回ります。
その回転を香箱の外の歯によって次の歯車に伝えます。

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バネを取り出してみました。
中心部分から慎重に伸ばしながら取り出します。
もし一気に弾けてしまうとおそらくどこかに折れ目を作ってしまいます。
そうすると交換するしかありません。

ト音記号のようになっているのは、ゼンマイの巻き状態がどんな場合でも、香箱の駆動力を一定にするためです。

アルコールを付けた布でゼンマイの端を挟み、順に引き出しながら汚れを取ります。
このときゼンマイを往復させると、特に押しのときに折れ目を作ってしまうので注意です。

掃除が済んだら香箱に戻します。
これが大変です。
プロはゼンマイ巻き機というのを持っていますが非常に高価です。
ですので素手で巻き入れます。
特に最初の部分はゼンマイの曲がり方向を反転させながら巻き込んでいくので少しテクニックが必要です。

最初の写真のように巻き入れたら、粘度の高いグリスをバネ間に落とし込み、蓋をします。
あとでリューズの巻き上げと解放を何度か行ってグリスを全体に行き渡らせます。

ゼンマイが終われば他の部品の洗浄・注油です。

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アルコールの中に部品を浸し歯間ブラシなどで擦ります。
超音波洗浄機もあるのですが直接擦る方が確実です。

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リューズもブラッシングします。
このリューズは防水性を出すためにねじ込み式です。
写真では見えませんが内面側に雌ネジが切ってあります。
この雌ネジの間に溜まった汚れを掻き出します。

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リューズ受けの孔もこんな感じです。
これをきれいにするのはメチャ快感です。

ガラスも外します。

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ケースに環状の土手が作ってあり、そこに浅い皿状のガラスが外から嵌められ、さらにその外側を環状のベゼルで挟んでいます。
プロが使う特殊オープナーはないので大型カッターを使います。
ケースとベゼルの切れ目にカッターの刃を割り込ませ、周囲に沿って少しずつ隙間を広げていきます。
手元が狂うと手を切ってしまいますので注意しながら作業します。

それにしてもガラスの嵌め合い精度にはいつも感心します。
ケースの土手とガラスとベゼルの寸法がピッタリ決まらないとガラスの押圧力が上手く出ません。

ガラスは実は二重構造になっています。
表面は完全なサファイアガラスですが、その周囲に樹脂製のリングが貼り付けてあります。

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写真の下の方で白くなっている部分が樹脂です。
この部分は微かに弾性があり、ケースの土手とベゼルによって挟み込まれます。

さて、機械部分については、所定の個所に注油して組み立てておきます。

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主な注油先は、テンプとガンギ車の軸受け、アンクルの爪先、香箱の軸受け、長針を受けるほぞ車、巻き上げ機構の筒車などです。
場所に応じてサラサラの油と粘性のあるグリスなどを使い分けます。
アンクルの爪先などは写真の針の先端にノミの涙ほどのオイルをつけ、チョンとつけるだけです。

長くなりましたので今回はここまでです。
次はメインイベントのケースの磨き作業です。

山崎
あみ知的財産事務所

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