モーターグライダー整備
こんにちは。
また飛行機ネタで失礼します。
この週末は、福井空港でモーターグライダーの整備をしていました。
昨年10月にエンジンの調子が悪くなり、その後エンジンを機体から下して点検を行ったり、必要なパーツを交換してきました。
そしてやっと今回、約半年振りに飛べそうな状態になりました。
朝の状態はこんな感じで、主翼も尾翼も外れています。
この機体、ドイツ・シャイベ社製のファルケといいます。
カテゴリーは飛行機の一つ下のモーターグライダーで2人乗りです。
胴体は鋼管フレームの周りに布張りで、主翼は木製の骨組みに同じく布を張っています。
少々古典的な機体ですが、操縦性能は極めて素直で練習機としてとても優秀な機体です。
エンジンの排気量は1200ccの水平対向エンジンで、ノンターボ100馬力です。
燃料は自動車用ハイオクガソリンです。
2週間前に、エンジンの取り付けまでを終えていましたので、今日は、ボルトの締め具合や配線のチェックを済ましたあとプロペラを取り付けます。
プロペラを外さなければならない整備は実は凄く稀です。
つい嬉しくなってプロペラをもってポーズしてしまいました。
このプロペラは木製で固定ピッチです。
軽いです。
6本のボルトでエンジン側の台座に取り付けます。
ボルトの取り付けトルクは整備マニュアルに細かく規定されていて、このペラのボルトは16Nmです。
感覚でいえば、締りの悪い水道栓をギュッと締めるぐらいの感じです。
それぐらいにしておかないと、材質が木ですからドンドンと圧縮変形してしまうのです。
ボルトの締め付けはトルクレンチを使います。
締め付け強さに偏りが出ないように、必ず対角位置にあるボルトを一組にして順番に締め付けます。
このボルトはプロペラをつけた台座をエンジン回転軸のハブに取り付けるものです。
こちらの締め付けトルクは、金属どうしの締結なのでかなり強めの46Nmです。
イメージできるかどうかですが、自動車のタイヤのボルトの締め付けトルクの半分ぐらい。
プロペラの取り付けが終了し、オイルと冷却水を入れてエンジンの乗せ換え作業が終了しました。
昼食のあと機体の組み立てです。
この機体、翼の幅が約17mありますので、使わない時は分解してあります。
翼は、両方から胴体に差し込み、夫々の翼の根元から突き出た腕どうしを重ねて、直径3cmほどのピンを1本だけ差し込みます。
心細いですが、これで両方の翼が一体になります。
翼が一体になると同時に、翼の内側面にある穴に、胴体から突き出た短いピンが入り込み、翼が胴体に吊られます。
飛んでるときには実は逆で、胴体が翼にぶら下がっているのです。
左右の主翼が付きますと次は水平尾翼です。
水平尾翼のうち前の部分の動かない部分を水平安定板と言いますが、左右の後縁についている2本のピンを胴体に引っ掛け、前縁のボルト1本で取り付けます。
そのあと、胴体の中に手を入れ、尾翼の後ろに付いていて上下に動く昇降舵(エレベーター)を、胴体内部の操作ロッドに連結します。
水平尾翼も木の骨組みに布張りです。
機体が組み上がり、いよいよ試運転です。
どれだけスムーズに回るか楽しみ半分、怖さ半分です。
しかし、エンジンは始動一発で掛かりました。
修理前はキャブレターの調子が悪く振動が大きかったのですが、ほぼ収まっていてとても気持ちよく回ります。
アイドル回転数を少し調整しますと、まるで新品のようになりました。
そのあと引き続き試験フライトです。
上昇時のフル加速も問題なく、900mまでスムーズに上昇しました。
エンジン回転数をいろいろ変えてみましたが、スロットルのレスポンスも良くなったように感じます。
福井空港では近々に東海・関西地区の大学航空部の訓練が始まりますが、その訓練に間に合うように修理が済んでよかったです。
今回の整備作業はなかなか大掛かりでしたが、エンジンの知識がさらに深まりました。
古い機体ですが手を掛けるほどに愛着が湧いてきますね。
山崎