モーターグライダーのタイヤ交換

こんにちは
先日、福井空港のモーターグライダーのタイヤを交換しました。

福井空港は当然ながらアスファルトの滑走路で、離着陸時にタイヤの表面が減り易いのです。
特に、着陸時にドカンと地面につきますと、そこだけすり減ってフラットスポットになってしまいます。そうなると滑走時に振動が出ますし、場合によってはそこからパンクすることもあります。

今回のタイヤもそのようなすり減りがありました。
全体に溝が少なくなってきていますが、そこにフラットスポットができたため溝が消えかけています。
因みに、飛行機のタイヤの溝は直線です特に急カーブを曲がる必要がなく、排水効果が期待できれば良いので。
タイヤは、受け台に乗っているリングナット一つで止まっています。ギザギザのリングはこのナットの回り止めをするカラーです。

タイヤは両側から分割ホイールで挟んでいます。
6本のボルトを抜くと、このようにホイールが外れます。

両側のホイールを外して中のチューブを取り出します。

新旧二つのタイヤです。
自動車のタイヤに比べてかなり軟らかく、週末だけ普通に使っている場合でも数カ月に一度交換が必要です。
グッドイヤー製の直径30センチほどのタイヤですが、これ1本が1万円以上します。 高っ!

チューブを入れる前にタルクを塗ります。と言ってもなんのことはない、ベビーパウダーです。
これを塗ると、タイヤとチューブの摩擦が減り、接地時などにタイヤがホイールに対して回転しても、チューブはタイヤに連れ回りし難くなります。
チューブには空気を入れる金具がついていて、これがホイールの孔から突き出ていますので、チューブまで回転すると空気金具が壊れてしまうのです。

チューブが収まりました。
チューブから出ている空気金具をタイヤの赤いマークに合わせます。
こうすると全体のバランスが良くなって回転振動が起き難くなります。

タイヤを組み付ける前にブレーキシューの厚みを点検します。
左の新品と比べてみてそれほど減っていませんのでこのままいきます。
このシューは原付バイクなどに使われているタイプのものと同じです。
機体自体が600kg程度と軽いので、クルマほど強力なブレーキは要りません。

車軸周りのブレーキダストを清掃し、車軸にグリスを塗ります。
このとき車軸から木製の受け台を外しますが、赤い油圧ジャッキが年代物で、もしかするとスルスルと下がるかもしれません。で、急いでグリスを塗ります。

タイヤを嵌め込み、リング状の固定ナットで抜け止めします。
固定ナットの締め付けトルクはそれほど強くはなく、レンチで軽く挟んでクイッと回す程度です。
ナットよりも先に内爪のついたカラーを入れておき、その外から固定ナットを締め込んだあと、カラーの周りについている爪の一つを折り曲げて固定ナットの溝に掛けます。
固定ナットがどこで止まるかわからないのでカラーの周りにはいっぱい外爪が付いています。
一度折り曲げた外爪は塑性変形して強度が下がりますので、再度伸ばして折り曲げることはしません。内爪の位置は1か所だけで、固定ナットの締め付け位置もほぼ一カ所に決まりますので、結局、たくさんある中で使われる外爪は一つだけです。なんか勿体ない。

これでタイヤが取り付きました。
2.1気圧になるように空気を入れます。
旅客機などは水分を含まない窒素ガスを入れますが、モーターグライダーは高空を飛ぶわけではないので普通の空気です。
このあと、右のカバーを被せ、車軸先端のボルトと胴体側のネジで固定して作業完了です。
飛行機のタイヤって左右前後バラバラに1個だけ交換することが結構多いです。

山崎

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