RADO クォーツ時計の修理 1
お久しぶりです。
先日、弁理士の何人かと飲み会がありました。
その場で、Aさんが、
「これ古い時計なんですが随分前から止まっています。動きますかねえ?」
と言いつつ時計を取り出しました。
見ますとRADOのクォーツです。
「おー、RADOですね」
暫く眺めて
「クォーーツ・で・す・かあ」
結婚当時に購入されたものだそうで、30年以上も前のものです。
クォーツは、以前に SEIKO のクロノグラフを修理したことがあるのですが、組み立てるときに小さなプラスチック製歯車の細い軸を何本も追ってしまい、同じ中古の時計をヤフオクで2個買い足した経験があります。
A :「動かなくてもいいので、ダメもとでみてもらえます?」
山崎:「りょうかいしました。中がどんな状態かわかりませんが、一度開けてみます」
ということで、RADOの修理が始まりました。
以下、Aさんとのやり取りを紹介します。
以下、山崎
A さん、おはようございます。
早速、時計の裏蓋をあけてみました。
外見よりもかなりヤレているという感じです。
写真で見ると汚れが強調されます。
時計本体は裏蓋に止めてあって、裏蓋と一緒にケースにパッチンどめします。
裏蓋の周囲に、時計本体を収める壁があって、この壁がケース内面に嵌め込まれ、壁の先端がクリーム色のパッキンを押し込み方向に押し付けます。
ただし、パッキンが正規ポジションになく部分的に変形していて、これまで気密性が少し甘くなっていたようです。
パッチン止めで気密性を保つのは元々かなり難しいです。
文字盤は、1時、8時辺りの腐食が進んでいます。
これは表面の汚れではなく、塗装の下からの腐食ですので何もできません。
費用を掛ければ文字盤の塗り替えもできますが、ムーブが復活したとしてその後どうするかですね。
ムーブメントですが、どのようなギアが入っているかまではまだ分解していません。
クォーツは、磁石付きのギアをモータで駆動し、幾つかのギアを介して針を回します。
磁石付きのギアは凄く小さいのでこの軸が固着することはあまりないと思います。
おそらく、その先の大きなギヤの軸などが汚れているのでしょう。
この汚れ具合ですと、内部に進入した水分などが軸の隙間に入って汚れと混ざったのではないでしょうか。
電池は、SR41SW で、通常のものです。
歯車の調子が良さそうなら電池を入れ替えてみても良いのではないでしょうか。
この機械で一番の気がかりはパッキンですね。
これの交換部品はもうないと思われますので、再利用するしかありません。
気密性は無いと思います。
因みに、同じ文字盤の時計はヤフオクではみつかりませんでした。
同じムーブを搭載した時計はビンテージウォッチとしていくつかありますが、動きそうなものは1万円前後します。
取り敢えず、ギア周りをもう少しみてみます。
A さんより
早速ご連絡いただき有難うございます。
それにしても、内部はひどい状態ですね。
1時あたりのくすみは、ガラスに汚れが付いているものと思ってましたが、文字盤の腐食だったのですね。
8時あたりはもっと酷いですね。
それにしてもパッキンの変形が大きいですね。
変形しているところと腐食しているところも大体合ってるし、今まで電池交換などを頼んだときに変形したのでしょうね。
もったいないことをしました。
この前お話ししましたように、一度は動かないと言って修理に出したのに、そのときは何のコメントもなかったと思います。
きちんと見てくれてたのかなあ?
ギア回りも見ていただけるとのことですが、かなり損傷も進んでいるようですし、無理のない範囲でよろしくお願いします。
山崎回答
電池交換は、写真の2枚目にあるように裏蓋にもう一つ丸い蓋が付いていて、本来はこちらを外します。
ただし、私も間違えたのですが、ムーブの下に見える大きな爪の方が目立つもので、これをあけてしまいました。
これを開けると、ケースからムーブが外れますが、電池は見えません。
前回の電池交換の時にも、おそらくこちらを開け、パッキンが変形したのではないでしょうか。
電池の裏蓋に11 4 とありますが、前回の交換時期は、2011年4月でしょうか。
仮にパッキンがアウトでも、ムーブが裏蓋に固定されているので、このパッキンがムーブのガタつきまで抑えているわけではなさそうです。
なんとなれば、裏蓋とケースの合わせ面に木工ボンドを塗っておけば、少しはシール性が出ますし、ムーブのガタつきも抑えられるかもしれません。
リューズの部分だけ塗るのをやめておけば、仮にボンドが多くても時計の外周側に溢れるので問題なさそうです。
文字盤は、コレクターの中にはオリジナル優先の考えもあって、あえて現状ままを好む人も多くいます。
ということは、やはりギア周りがどうなっているかですね。
次回に続く