RADO クォーツ時計の修理 5(最終)
いよいよ最終回です。
山崎:
おはようございます。
出張に行っていたりと少し休憩していましたが、昨日、完成しました。
クォーツの精度が心配でしたが、昨晩から今まで誤差なく動いています。
機械とケースの間に入れるパッキンを再利用しようとしましたが、変形が激しく元の位置に収まらないので諦めました。
この時計の構造上、パッキンがなくても機械がケースの中で動くことはありません。
耐水性を少しでも高めるために、写真にあるように木工ボンドを塗ってあります。
木工ボンドの内周側は土手になっていて、文字盤はその土手の上に位置しているので、ボンドが機械の側に回ることはありません。
また、リューズの近辺には塗ってないので、リューズの動きが悪くなることもありません。
ただし、リューズの辺りは、その分、水が入り易いです。
それと、文字盤の四隅が曲がっている原因がなんとなくわかりました。
この時計を組むときに、
上の写真のように裏ケースに機械を固定する →
裏ケースに電池交換用の丸い裏蓋(修理1の写真)をパッチンどめする →
裏ケースを表ケースにパッチンどめする
という流れになります。
これは、裏ケースを表ケースに押し込むときに、裏ケースの全体を指で押したいので、まず電池交換用の裏蓋を裏ケースに嵌める方がやり易いのです。
ところが、上の写真の状態のケースに裏蓋を嵌めようとするときにも、そこそこの力が必要です。
このとき、指でケースの枠だけを押さえようとしても、文字盤の縁に指が掛ってしまうのです。
そのため四隅がダレてしまったと思われます。
なので、木工ボンドを塗った縁のところだけを押す冶具などを使い、裏ケースを裏蓋に押し付ける というのが正解だと思います。
または、比較的安全な方法は、
上の写真のように裏ケースに機械を固定する →
表ケースをガラスを下にして置き、これに裏ケースを位置決めし、さらに、裏蓋を裏ケースに位置決めする →
裏蓋と裏ケースの全体を指で押しながら表ケースに押しつける →
裏ケースか裏蓋かのどちらかが先に嵌まるので、もう少し力を入れて残った方を嵌める
というものです。
おそらく、以前の電池交換時に、裏蓋ではなく裏ケースを開けてしまったのが原因のようですね。
それから、ベルトもクリーニングしておきました。
上がビフォー、下がアフターです。
繋ぎ目に結構な汚れが溜まっていました。
台所のマジックリンに暫くつけて、ブラシで擦ると大体の汚れは落ちます。
世間にはいろいろな専用洗剤がありますが、マジックリン最強です。
ということで完成です。
写真では文字盤の1時と8時のあたりに汚れがハッキリ見えますが、実際には注意して見ないとわからない程度です。
それと何といってもハードメタル製ケースの頑丈さは完璧です。
30年以上経っているのに実体顕微鏡で見てもスリ傷一つありませんでした。
それにしても復活して良かったです。
クォーツは手に負えないと思っていましたが、普通の金属ギヤを使った昔のムーブメントだったのが幸いしました。
Aさん:
おはようございます。
時計の修理有難うございました。
クオーツは電子回路だから、修理というよりユニット交換しかないだろうと思ってました。
復活して本当によかったです。
以上、RADOクォーツの修理顛末です。
いつも思いますのは、修理のポイントは、文字盤とパッキンと風防でしょうか。
特に風防が綺麗な時計は中もだいたい綺麗です。
文字盤など中に密閉されていて劣化程度に差が無いように思いますが、不思議なことに外観と連動するみたいです。
Aさんは、大手機械メーカー出身の弁理士です。
時計の分解一度やってみませんかと勧めていて、ご本人もまんざらではないような。
山崎