オールド RADO の修理 1
こんにちは。
RADOクォーツの修理が終わったばかりですが、次は同じRADOの機械式です。
前回のAさんとの飲み会の席に別の弁理士Bさんも居られまして、
「実は私も持ってきたんです」
と言って出されたのがこれでした。
1960年代の「ワールド トラベル 57石」です。
Bさんのお父さんが若い頃にボーナスをはたいて買ったのだそうです。
今は放置されていて、もし動かなかったら捨ててしまうかもしれないとのことです。
それは勿体ない。
時計を軽く振ると秒針がトコトコと動いて止まります。
テンプは生きているようです。
リューズを引いて時間合せもできます。
ただ、ゼンマイを巻き上げるのは、ゼンマイが汚れで固着していて切れると困るので止めました。
この時代の高級時計によくあるスタイルですが、ケースの表面は20μmの金膜貼りです。
ただし、くすみがひどく、使い込まれた五円玉のような色です。
風防はプラスチック製で、カレンダーレンズが内側に膨らんでいるタイプです。
飛び出したレンズだと、不意に何かにぶつけてレンズの真中に傷が付くことが多いのですが、これだとその心配はありません。
風防表面は、枯れた池の底のようにひび割れがひどく、斜めから見ると文字盤がよく見えません。
周囲のあちこちに緑色の汚れも沢山ついています。
文字盤はかなりヤレています。
印字の剥がれこそありませんが、コーティングの所々に斑点状のシミがあります。
業者に依頼して完全に書き換えるという手もありますが、このまま歴史を残しながら使うのも良いかと思います。
単なる趣味の範囲では、文字盤の修復はどうにもなりません。
外見はこんな感じですが、経験上、秒針が動く機械式時計は十分に復活の可能性があります。
「これはなかなか古いRADOですねえ。
表面はくすんでますけど、金貼りだから磨けば綺麗になると思いますよ。
ルビーが57個も使われていて、かなり豪華な機械が入っていそうですね。
どこまで直るかわかりませんが一度あけてみます」
ということで、興味大津々で持ち帰ったのでした。
早速、中を開けてみました。
なんと、自動巻きです。
盛大に汚れています。
過去最大級レベル。
でも、汚れているほどビフォーアフターの差がハッキリして実は嬉しかったりします。
自動巻ユニットの歯車の円盤部分にはルビーがしっかりと散り嵌められていて高級機であることがわかります。
これは、歯車が回るときに横の壁や隣の歯車と当たることを想定して滑り部材の役目をします。
でも実際の目的は装飾かな。
また、機械の殆どが金メッキ仕上げです。
通常モデルでは金メッキがなく素材ままの銀色です。
扇形のロータの屋根角は、時計が強く振られたときにケースの裏蓋に当たることもあるのか少し色が剥げています。
自動巻きローターの軸は、ぐるぐる回る重いローターをこの軸だけで支えるためガタが出易い部分です。
しかし、この機械では皆無でした。
汚れてはいますが丁寧に使われていたことがわかります。
そういえば、風防の表面も、ひび割れこそありますが大きな打ち傷は一つもありません。
汚れているけど機械のコンディションは上々と感じました。
さて、修理の手順ですが、主には
1.機械の分解・清掃・注油・組み立て・テンプの歩度調整
2.風防研磨あるいは交換
3.ケースの清掃・磨き
です。
どこまで復活して綺麗になるかかなり楽しみです。
次回に続く