オールド RADO の修理 5

今回は、やっちまったの巻きです。

部品の清掃が終わって、組み立てを始めました。
リューズの押引機構の部分になり、小さなバネを飛ばさないようにしながら部品を配置しました。
その時に、ついうっかりと下の写真の下段のようにばねを組んだのです。

ここで正解は、上段の写真の状態です。
リューズを押し引きすると、くの字の部品が支点を中心に回転し、先端の小さな突起が動いて、上段写真の位置と赤丸印の位置とを行き来します。
上段写真の位置がゼンマイを巻き上げることができる通常位置で、リューズを引いた赤丸の位置が時間合せの位置です。

このどちらかに組めば良かったのですが・・・・。
このあとリューズを差し込んで動作チェックをしますと、当然、リューズは機能しません。

ここで、一旦、バラすべきだったのですが、突起の位置が違うことに気が付いてしまいました。
それならということで、横着をしまして、下段写真の矢印のように突起を押しながら、ばねの腕を下に広げることにしました。

これが意外と重く、もう少しで突起が腕の先端を乗り越えそうだったので、もう一息ばねの腕を押したとき、「パキッ」という音がして、ばねの先端が顕微鏡の視界から消えました。

?????・・・・・。
やっちまったあ !

写真で見ると、通常の二箇所の位置間を乗り越えるときの山の高さと、ばねの先端の山の高さはそれ程変わりません。
しかし、このほんの僅かな高さが命取りとなりました。
ばねの止めネジを3回転緩めるだけで簡単に修正できたのに。

折れたばねです。

これはどうしようもありません。
ハンダや接着剤で着けるのは無理です。
古い時計なので新品部品は入手不可能でしょう。

ということで、頼みのヤフオクで部品を探してみました。

ブランド時計のジャンルに行き、「RADO ワールドトラベル」で検索してみると、稼働品が幾つか出てきました。
しかし、どれも1万円以上します。
どうもここのところ古いRADOは人気が出ているようです。
それに、稼働品から部品を取るとその時計が動かなくなるので大変気が引けます。

この時計のムーブメントは、今はもうETA社に吸収されましたが、スイス・アドルフシールド社製 Cal.1701ですので、同じ機械を載せている時計を探します。
例えば、RADOのゴールデンホースや、グリーンホースです。
どれも同じ雰囲気の時計ですがゴールデンホースが最も有名でしょうか。

ヤフオクを探しますと、グリーンホースのジャンク品が1,000円で出ていました。
残り時間はあと四日です。
できればそのままで落札したいところですが、幾らになろうが絶対に買わなければなりません。
ドキドキの四日間が過ぎ、なんとか4,000円で落札することができました。
これです。

流石にコンディション悪そうですね。
中を開けてみると、写真ではわかりませんが、あちこち錆びていて、これを復活させるのは厳しそうです。
ムーブメントを止めるネジは二つともありません。

この機械は、金メッキがされておらず通常タイプのものです。
リューズを巻こうとしましたが何かが引っ掛かっていて動きません。

リューズの形はしっかりしているのでこちらの時計に使えるかなと思いましたが、長さが足りません。
同じ機械なのですが、グリーンホースのケースがやや小さいので、リューズから先の巻き芯の長さが短いのです。
それに巻き芯をねじ込むリューズの雌ねじ回りの形も違いました。
残念。
これに時間を掛けるわけにもいかないので、目的のばねを取り出すだけにしました。

ばねは大丈夫でした。
これで、こちらの復旧が進みます。

尚、後日、このグリーンホースは一応ケースだけ磨き直し、折れたばねのことも含めて故障個所を全て明記してヤフオクに再出品しました。
そしたら、買った値段よりも少しだけ高く売れてしまいました。
ほんの時々ですが、こういうラッキーがあるのも時計修理の楽しみの一つです。

次回に続く

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