TUDOR 1

ご無沙汰しております。
年明けから3月期末まで慌ただしくしていて随分間が開いてしまいました。
久々のアップですが、すいません、また時計ネタです。

今回のは、前回のRADOの弁理士Bさんのご友人のKさんの時計です。
お婆さんの時計を譲り受けたそうですが、秒針がコトコトと動いて直ぐに止まるとのことです。
一度、内部の確認をということでお預かりしました。

こんな外観です。

TUDOR(チュードルとかチューダーとか言います)のレディースです。
ネット情報ですと、昔のTUDORは、当時ROLEX社がイギリスでのROLEXの知名度を高めるために、開発したばかりのケースをそのまま使いながらスイスETA社の機械を入れて作った価格を抑えた時計だとあります。

TUDORを触るのは初めてです。
どのような時計か楽しみです。

風防などは流石に使用感がありますね。
ただし、大きな打ち傷がありませんので大切に使われていたことがわかります。

文字盤にはバラのマークがあります。
これは「小バラ」といって、当時のTUDORにしか印刷されていないようです。
今ではプレミアがつきます。
その後のTUDORは、バラのマークではなく盾のマークに替わっています。

文字盤全体に大きなサビなどは見えません。
インデックスの外側の蛍光マークも全て当初の形のままです。
ただし蛍光機能はありませんが。

針の蛍光塗料がカビています。
これも塗り直しが必要でしょう。

文字盤にあるOYSTERは、ROLEXが発案した防水性ケースのことです。
金属から削り出したケースにねじ込み式リューズを組み合わせて防水性を高めています。

SHOCK RESISTING とあるのは、テンプ(左右に往復回転する時計の心臓部)のルビー押さえに弾力を持たせて時計に衝撃が掛ってもテンプの芯が折れないようにした構造のことです。
(オールドRADOの修理4の図参照)

風防はプラスチック製で、長年の使用で沢山の擦り傷があります。
ただし、大きな傷はないので、少し研摩すると綺麗になると思います。
プラ風防は研摩できるので扱い易いです。

風防周りのベゼル、ケースのサイドは本来は鏡面仕上げですが、細かな擦り傷が沢山あります。
これも研摩して綺麗にできます。
研摩と言ってもほんの数ミクロン削るだけなので、金属が痩せるようなことはありません。

型番とシリアルナンバーです。

Ref.7535/0
Ser No. 621×××
シリアルナンバーからみて1968年製のようです。
なんと50年前の時計。

裏蓋を開けてみました。

全体的に汚れていますが、これまでの使用時間を考えるとかなりきれいな状態で、大きなダメージは無さそうです。
ねじなどの欠損、痛みもなさそうです。
この程度の汚れだと、アルコールでクリーニングすると綺麗になります。

当時の機械は、歯車の芯孔が、単に金属の地板に孔をあけただけのものも多いのですが、これは、しっかりとルビーが入っています。
敢えて17 RUBIESと刻印してあるので、当時としてはルビーを贅沢に使ったのでしょうか。
17個のルビーは今では一般的となりましたが、その後の時計では、文字盤に17 JEWELSと書くことが多くなりました。

今回のご依頼の一つが、ベルトが長いので一コマ抜いて欲しいというものです。

これは所謂「すし巻きベルト」というやつで、中央の板を折り曲げてコマどうしを繋ぎます。
なので、コマ調整の際に真中の部品を広げてしまうと、たいていの場合、不用意に折り目が入り、次に装着した時には折り目が目立ってしまうのです。
Kさんは、ROLEXの代理店にコマ調整を依頼したけれど断られたとのことです。

ベルトの2コマ目の中央部品が少し折れ曲がっています。
そのため裏側の曲げ部が少し開いています。
このコマの形状を美しく修正するのはかなり難しいので、この中央部品を抜きつつコマ調整することにしましょう。

最初の写真に戻りますが、12時側のベルトの付け根の金具(フラッシュフィット)が浮いています。
場合によっては服の袖が引っ掛かると思いますのでケースに沿うように修正します。

50年前の時計ですから精度誤差が気になります。
秒針が少し動いて止まるということは大方ゼンマイの潤滑不足です。
当然に他の部分のオイルも切れているので、歯車の軸受けがすり減って歯車の姿勢が変化し、歯車どうしが干渉して止まるということもあります。

何が出て来ますか。
次回は、分解に進みます。

山崎

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