モグラのフェリー 1

こんにちは

普段、福井で運航しているモーターグライダーを埼玉まで空輸することになりました。

来年3月に埼玉県の妻沼(めぬま)滑空場で学生グライダー競技の全国大会があります。
東海・関西地区でも既に予選が終わっており、全国大会への出場選手が決まっています。
その選手達が毎年この時期に大会会場で強化練習を行います。
そこでグライダーを曳航するために福井のモーターグライダーを妻沼にフェリーすることになりました。
久々のロングフライトで楽しみです。

機体の諸元です
機体:  ドイツ・シャイべ社製 SF25C ファルケ
機体構造:胴体は鋼管フレームに布張り、翼は木製布張り
エンジン:水冷・水平対向1350cc 100hp 自動車用ハイオクガソリン使用
燃料タンク55L 飛行時間約4時間 実質燃費約10km/L
巡航速度:100~140km/h

長距離フェリーで大切なことは天気です。
出発地と到着地の間の全ての天気が良くないといけません。
秋口になると北陸と関東では天気が随分違いますので、飛べる日はかなり限られます。
結局、今回も全地域OKということにはならず、関東でちょいと雲が多いかもという天気の日を選ぶことになりました。
当初、休日の何れかを期待していたのですが結局平日となってしまいました。

今回のコースです。

途中で長野滑空場に降りて給油します。
燃料満タンでおそらく妻沼まで届くのですが、その場合、3時間半掛かります。
この寒い時期、人間のトイレ事情などもあり、途中で休憩を入れることにしました。
また、全行程で上空に雲が予想されることから、雲の下を這って行くことになりそうです。

先ずは機体の暖機運転です。

この機体は、左側には航法計器が集められ、右側にエンジン計器が集められています。
飛行機の世界では飛行前に必ずエンジン試運転を行います。
エンジン回転数2,500rpmで暖機をし、各部品が適温になって部品どうしのクリアランスを飛行状態にします。
その後、電気系統、燃料系統に問題がないかどうかをチェックし、最後はフルパワーまで加速して、回転がレッドゾーン(5,800rpm)までスムーズに上がるかどうかを確認して準備完了です。
写真では切れています(後の写真にあります)が一番右の回転計を見ながら確認します。

今回は、長年ヘリパイロットをされていたKさんとご一緒します。

暖機運転の後、最後にもう一回乗員のダンプ運転(つまりトイレです)をします。
10時過ぎに福井空港を出発しました。

海岸沿いに小松空港が見えます。
向うの白いビル群が民間のターミナルで、手前右側の建物群が自衛隊小松基地です。
今日は平日で、民間機のフライトに加え自衛隊のF15等もフライトします。
なので、半径9kmの小松管制圏に入らないように南側に離れて飛んでいます。

雲底が900mなので雲から少し離れるよう高度は750mです。
対気速度は120km/hですが、向かい風なので対地速度は100km/hです。
高速道路を走る車の方が速いです。

金沢から富山に渡るところです。
左奥に能登半島が延びていて、その左に薄く日本海が見え、右側に富山湾が見えます。

富山空港です。

河川敷に細く長くアスファルト舗装がしてあります。
ここは定期便があるのですが一日の本数は多くありません。
今は空き時間ですので空港のすぐ北を通してもらいます。

空港の近くを通るときには、VHF無線機をその空港のタワーの周波数に合わせ、通過することを伝えながら飛行します。
機体にはトランスポンダが積まれていて、一応、各空港のレーダーに機影が写っているのですが自機の存在を積極的に連絡します。

同乗のKさんはこの近くに住んでおられるのですが、今朝は電車で福井まで来られました。
富山でピックアップという手もあったのですが、ロングフライトでは何が起きるかわからないので、原則二人で飛ぶようにしています。

富山空港から次の通過ポイントの糸魚川に向けています。
海にせり出している山の向こう側です。
下の川は神通川です。

因みに、この富山湾は夏の蜃気楼で有名です。
前方の入り込んだ辺りから西側の能登半島の方を見ると対岸の景色が浮き上がって見えるそうです。

糸魚川市です。
中学のころ習ったフォッサマグナの糸魚川です。
初めて来ました。

真中に見えるのは姫川で、実は糸魚川という川はありません。
私も今回まで知りませんでした。
町の真ん中を北陸新幹線が走っています。

糸魚川の上空で右旋回し、白馬の方へ変針します。
わざわざ糸魚川まで来たのは、富山と長野の間には剣・立山や白馬等の3,000m級の山が並んでいて、雲の多い今日の天気では超えることができないからです。

姫川に沿って南下します。
飛行高度は3,600フィート(約1,100m)ですが、これは海抜高度なので対地高度はこんな感じです。
周りの山の方が高いです。

ここの谷は、谷を渡る高圧線がないのですが、一応前方をよく監視しながら進みます。
左右の山に近付き過ぎるとGPSの対地接近警報が鳴って知らせてくれます。

すいません、一カ所だけ山頂に雲がなく、山と下層の雲がえらく綺麗だったので自撮りしてしまいました。
奥は立山連峰で実は北向きに飛んでいます。
山を入れるためにわざわざ逆方向に旋回しました。

白馬村の上空で東に変針し、長野盆地に到着したところです。
下の犀川が先の方に延び、右から山がせり出している辺りで千曲川に合流します。
長野滑空場はその合流点にあります。

長野滑空場へのアプローチです。
千曲川の河川敷です。

このあとファイナルターンし、橋の丸いアーチの向こう側から南向きに着陸します。
煙を見ると少し背風ですが、駐機場が南の端なのでこのまま進入します。

着陸しました。
福井から2時間半。

その途端に捕まりました。
というのは嘘です。

この日は平日で、普段ならグライダーが飛んでいないので長野県警がパトカーの技量向上訓練を行っているのでした。
急きょ我々が飛んで行くことになったので、飛行機優先ということで着陸の時だけ滑走路を開けて頂きました。

この他にも沢山のパトカーが集結していました。
滑走路にパイロンを立てて狭い屈曲コースが作られ、狭い円陣の中では方向転換の練習をしていました。
滑走路の向うの方では高速からの急停止練習もしていました。
急停止の最中には決してタイヤは鳴らさないのですね。

次の目的地の妻沼の気象をネットでみますと少し雲が厚いようです。
現地で既に合宿しているメンバーに聞きますと、やはり雲の切れ間が少ないとのこと。
予報ではこのあと徐々に良くなるようですので、持参したおにぎりを食べ、長野グライダークラブの方にお願いしておいた燃料を給油します。

ちょうど20リッター入りました。
福井からここまで約230kmですから燃費11.5です。
エンジンは電子制御式ではなく昔ながらのキャブレター仕様ですし、道中が向かい風で燃料消費量が多かったことなどを考えるとこんなものだと思います。

後半につづく

山崎
あみ知的財産事務所

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