スチレン飛行機 1

こんにちは
今回は模型飛行機です。

私が属している大野・福井グライダークラブで作っているスチレン製の模型飛行機です。
なかなかの人気で、ここ最近では毎年1500~2000機作ります。
因みに右は市販のドラえもんグライダーです。

10年ほど前に私が設計し、各地でのイベントで経験を積みながら設計変更してきました。
作製は全て人手で、翼や胴体は普通のカッターナイフで切り出します。
シーズン前に製作合宿を開いてその年の分を作りますが、数が多いので飛行機が捌けるまでは家の中が段ボールだらけになります。

オーソドックスな形ですがなかなか良さそうでしょ。
実際に飛ばしてみると、これが結構飛ぶのです。
ゴムで真上に打ち上げるのですが、2階の屋根ぐらいまで上昇したあと滑空して降りてきます。
風が無ければ滞空時間は10秒ぐらいですが、風の状態が良ければすごく長く飛ぶときがあります。
一度だけ上手く上昇気流に乗って見えなくなるまで上昇していったことがあります。

さて、ドラえもん号と並べてみると手作り感満載ですね。
どちらが飛びそうかは見る人によって違うと思いますが、実は模型飛行機の飛び方は様々です。
これら二つの設計思想も全く違うのです。
簡単に言うと、スチレン機は高く長く飛び、ドラえもん号は真っ直ぐに飛びます。
それぞれに味わいがあります。

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飛び方の違いを説明する前に、ちょっとスチレン機のパーツを紹介します。
取説は除きまして構成部品は八つです。

上から、主翼(2mm厚スチレンペーパー)、おもり(板なまり)、カタパルト(割り箸)、バンパー(スポンジ)、糸ゴム、胴体(両面に紙を貼った5mm厚スチレンボード)、水平尾翼と垂直尾翼(共に1mm厚スチレンペーパー)です。

全ての部品は両面テープで取り付けます。
両面テープは予め各部品に貼ってあるので、小さな子供さんでも約5分で組み立てることができます。

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さて、飛行特性です。
まず、ドラえもん号。
ハサミを少し開いてドラえもん号を重心で支えてみました。
全体の重心が主翼の中央よりも前にありますね。

このように前重心だと、飛行中にノーズが下がろう下がろうとします。
ですので、安定して飛ばすためには、水平尾翼を前傾させ、飛行中の気流によってテールを押し下げる必要があります。
主翼と水平尾翼の取り付け角度が明らかに違いますね。

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一方、スチレン機です。
支持位置が随分後ろですね。
このように後ろ重心だと、飛行中にノーズが上がり、テールが下がろうとします。
それを防ぐためには水平尾翼の取り付け角度の前傾を少なくします。
こうすると、飛行中には、水平尾翼はテールを押し下げるのではなく浮かすように働きます。
このスチレン機では、主翼と水平尾翼の角度が同じ、いわゆるゼロセッティングにしてあります。

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両機を前後方向から見てみます。

上がドラえもん号。
前から見た様子ですが水平尾翼の前傾が良くわかります。
主翼は単に真っ直ぐで上半角はなく横安定はあまり期待できません。
主翼・胴体・尾翼は全て同じ厚さのスチレンボードが使われています。

下はスチレン機を後ろから見た様子です。
水平尾翼の前後傾斜はありませんが、左側よりも右側が下になるように傾斜させています。
これは左旋回させるためですが、このように左右で傾斜させることを俗にスタビチルトといいます。
この効果はまた別の回に説明しますね。
話を戻しますが、主翼の両端には上反角をつけています。
こうすることで横安定が増し、特に上昇後半で水平飛行に移り易くなります。

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スチレン機の方が大きいのですが重さは両者でほぼ同じです。
つまり、スチレン機は、主翼の単位面積当たりの負担重量が少なく翼面荷重が小さくなっています。
翼面荷重が小さいと、飛行中の沈みが減り、滞空時間が長くなります。

両機の飛び方の違いですが、ドラえもん号は、ある速度で真っ直ぐに飛びます。
ただし、ゴムで打ち出すと、水平尾翼の押え力が大きくなり過ぎて直ぐに宙返りしてしまいます。
なので高く飛ばすことはできません。
ドラえもん号は小さな子供さんが手で投げて真っ直ぐに飛ぶことを狙っています。

これに対してスチレン機は、主翼と水平尾翼が同じ角度ですので、ゴムで打ち出したときに水平尾翼と垂直尾翼が矢羽根のように働き、打ち出した方向に真っ直ぐに飛んでいきます。
飛ぶというよりはただ勢いで進むという感じです。
ですので真上に打ち上げると速度がなくなるまで上昇します。
その後、落下し始めますが、上手く重心を設定するとヒラリと姿勢を変えて滑空姿勢に入るようになります。
滑空に移ると気流が主翼に対してやや下方から当たる状態になり、ゆっくりと降りてきます。
このようにスチレン機は、打ち出し時には高速直進モード、滑空時には低速フワフワモードで飛行します。
高度を稼ぎ、滞空時間を伸ばす設計思想です。

このような簡単な模型飛行機は飛行中に水平尾翼などの角度を変えることができません。
ですので、飛ばし方に応じて機体の設計を変えることになります。
今回は両機の大まかな違いを説明しました。
次回はもう少し理論的に両者の飛び方の違いを説明しますね。

尚、2019年7月1日より 本機の提供を始めました。
航房 YAMASAKI

山崎
あみ知的財産事務所

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