スチレン飛行機 5

こんにちは
スチレン飛行機シリーズの一応の最終回です。
今回は、垂直尾翼の働きについてです。

実機に付いている垂直尾翼は、飛行機の直進状態を安定化させたり、旋回時には足で操作して旋回方向に動かすことで機首をそちらに向ける働きがあります。
ただし、今回のようなスチレン機では上空で動かすことはできませんので、固定状態で取り付けることになります。

真っすぐに取り付けられた垂直尾翼は、飛行方向に対して機種の向きが急に変わった時などに風見効果で機首を対気の方向に向け、機首が触れる(ヨーイング)のを防止します。
そのためには大きい方が良いのですが、実は大き過ぎても困ったことが起きてしまいます。

垂直尾翼が大き過ぎると機体が傾いたときにスパイラル降下に入り易くなるのです。

前々回のおさらいですが、例えば機体があおられて左に傾いたとします。
機体は左に滑り始め、左翼の下面に当たる気流の迎え角が増し右翼の迎え角が減ります。この結果、左翼の揚力が相対的に増えて機体は水平に戻ります。
ところが、垂直尾翼が大き過ぎると、機体が傾いて左に流れ始めたときに直ぐに風見効果が効き始め、上半角効果が発揮されるよりも先に機体の流れる方向に機首が向いてしまいます。
その結果、機首が突っ込み、速度が出て主翼と尾翼の揚力バランスが変化することでやっと上昇姿勢に回復します。この間には高度を大きく失います。

また、主翼の左右の角度調整が不調で左に傾く癖がある場合には、下図に示したように、機体が傾き→機首をそちらに向けて突っ込み→さらに傾き→もっと機首を下に向ける となってスパイラル降下に入ってしまいます。

ラダー効果

また、垂直尾翼が大き過ぎると、ゴムで打ち上げたときに速度がなくなるまで風見効果が効き続け、上向きの姿勢で機体が空中停止してしまいます。重心バランスが前よりだと、その後急激に落下姿勢に移り、最悪は地面に激突してしまいます。
このように垂直尾翼が大き過ぎると上空で返り難くなります。

では、垂直尾翼は小さい方が良いのかというとそうでもありません。
小さ過ぎると左右にフラフラと揺れながら飛ぶようになります。

例えば機体が左に傾いたとき上半角効果で機体の傾きが直るのですが、水平に戻っても垂直尾翼の風見効果が少なく左方向への横滑りが続きます。
その後、今度は左翼が上げられ、機体は右に流れ始めます。
このような動きが以後繰り返されるのです。
この場合、機体が地面に激突するようなことはありませんが、左右に振れることで飛行中の空気抵抗が増え、滞空時間が短くなってしまいます。

垂直尾翼の大きさを決めるにも垂直尾翼容積という考え方がありますが、翼の長さや面積、上半角の付け方や、主翼から垂直尾翼までの距離などによって垂直尾翼の効きは変わります。
胴体の面積も影響しますので計算式はあまり気にしていません。
ということで、結局は現物合わせしています。
この機体では、最初に大きめのものを付けておき、飛ばしながら少しずつ切り取っていって今の形に落ち着きました。

模型飛行機の形にはこれといった正解はないように思います。
乱暴に言えばどんな形のものでも調整次第でそこそこ飛びます。
あとは、スタイルや、作り易さ、頑丈さ、飛行性能など、何を優先させるかでいろいろな機体が作れます。

このスチレン機の目下の目標は製作の効率化です。
年間2000機の製作は結構大変です。
今は、特に正確な胴体を大量生産できる製作治具を考えているところです。

尚、2019年7月1日より 本機の提供を始めました。
航房 YAMASAKI

山崎
あみ知的財産事務所

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